バイエン先生 と ぼっけい君 vol. 1  |  kosi.H

バイエン先生

ぼっけい君

vol. 1

 

バイエン先生

ぼっけい君

vol. 1

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この本について。

共有したいと考え、まずはそのとっかかり、入門書の入門書になるべきものとして、このような翻案を思い当たったのでした。
 三浦梅園の思想に触れるためには、もちろんその著作に直接当たっていただくのが一番なのですが、梅園関係の本には絶版になっているものが多く、古本屋などで手にしていただくしかないものがほとんどです。そういう状況ですが、まずお勧めしたいのは、三枝博音著『日本思想文化』(中公文庫)、岩波文庫の『三浦梅園 自然哲学論集』です。その辺りから入った後、もっと興味がある方は、「三浦梅園の謎を解く」というウェブサイトhttp://www.coara.or.jp/~baika/
に、膨大な資料がアーカイブされていますので、そちらを参考にされると良いと思います。

それでは本文へ。

 この『バイエン先生とぼっけー君』は、現在の、大分県国東に住んでいた学者、三浦梅園(1723-89)が55歳の時に書いた『多賀墨卿君にこたふる書』を元ネタとした翻案小説です。
 この『多賀墨卿君にこたふる書』は、梅園の主要著書である『玄語』、もしくはその哲学(条理学)を理解するための入門書として知られていますが、読めば読むほど、入門書とはとても思えないほどに非常に難解な内容が含まれていることに気づきます。
 それはもちろん、『玄語』の非常に難解な内容が背景にあるからなのですが、この『多賀書』を読み通すことが出来れば、条理学の大まかなところが掴めることも確かだと思います。
 かく言うぼくも何度読んでも発見と疑問が湧いてきて、この本を理解したというにはほど遠い状況ですが、三浦梅園の思想の重要性や、そ
の可能性をなるべく多くの方に知っていただき

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【目次】

 0. 登場人物&状況設定   p.5 - p.6

 1. コンリンウツボツとは? p.6 - p.10

 2. キティの怪       p.10 - p.16

 3. 写真司書室と絵蝶汚清  p.16 - p.23




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『バイエン先生とぼっけー君』
全三巻の構成
vol. 1 ハズクセの巻
vol. 2 ジョーリの巻
vol. 3 ジブツの巻

バイエン先生

ぼっけい君

vol. 1

【登場人物】
●バイエン先生●
本名、観裏進(みうらすすむ)。幼い頃から、自分の名前を一見してちゃんと読めた人がい ないのが不満。「カンリススム(管理進む)」「カンリシン(管理神)」「カンウラシン(関羽裸身)」などと読まれ、馬鹿にされたが、一番納得いかなかった のが「勧進帳」と読まれた時だった。名前を一一説明するのが嫌になり改名を決意。安貞、攣山、洞仙、季山などといろいろ変えてみたものの、やはり誰も正確 には読んでくれず、もっと簡単そうな「梅園」とした。それでも病院の受付で「カンリウメゾノさん」と呼ばれたことに腹を立て、いっそのことカタカナ表記で 「ミウラバイエン」とした。父親の仕事を継ぎ、針灸師を生業としていることもあり周りの人々からは「バイエン先生」と呼ばれている。また、生業の傍ら独自 の「条理学」なるものの研究に日々没頭している。結婚歴3回の55歳。

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○ぼっけー君○
本名、箍没系 (たがぼっけい)。33歳。若い頃に医者を志すが血を見ると貧血を起こす体質が災いし、断念。その後、職を転々とするも全ての職場でリストラを経験。なぜ かその度に貧血を起こす癖がつく。世を果無み、自殺しようと思いながらトボトボと歩いていたとある田舎町の雑貨店でカミソリを買ったものの、近くの小川の 川縁でその刃を手首に当てた瞬間、「切ったら(自分の血を見て)貧血起こすだろうな」と思ってしまい、「切りたい、でも貧血は嫌、切りたい、でも…」というトラウマのループに陥いる。その様子をたまたま通りがかったバイエン先生がじっと観察していたがいつまでたっても動き出さないぼっけー君に業を煮やして踵を返す。静かに歩き出した足下をヒキガエルが這いずっており、それを踏んづけてしまった。踏んづけられたヒキガエルが、ぐぇ〜っとひどい声を出し、さらにその踏んづけた気持ち悪さでバイエン先生も、ぎょえ〜っとと叫ん だものだから、ぼっけー君はぎくぅっ

ぼっけー君:こんばんは〜。
バイエン先生:お、こんばんは。
ぼ:先生、今お時間大丈夫ですか?
バ:ん?あぁ、まあ大丈夫だよ。
ぼ:この間のメール、ありがとうございまし
  た。いろいろ詳しく書かれてて、すごく
  勉強になりました。
バ:いやいや、どういたしまして。
ぼ:それで、あのメールのことで少し質問があ
  るんですが…
バ:なんなりとどーぞ。今時間あるし。
ぼ:あざーっす!
バ:で?
ぼ:先生が
ぼ:「混淪鬱浡」
ぼ:って書かれてましたけど、
バ:はいはい。書きましたね。そういえば。
ぼ:あれ、何て読むのかなぁ、と。^^;
バ:あれは「コンリンウツボツ」と読むんで
  す。まあ「コンロン」でもいいんだけど。
ぼ:割といい加減なんですね。読み方って。

となり、その拍子に思わず手首を少し切ってし
まい、自分の血を見てやっぱり失神してしまったのだった。それをみたバイ エン先生が罪悪感を感じ、彼を懐抱したのが縁で、以来、10年ほどの師弟関係が続いている。最近はコンビニに勤めながら、海外旅行を企て、英会話を始めた。

【状況】
午後9時頃。一時は膨大な数に上った蔵書をすっかり売り飛ばしてすっきりした書斎でバイエン先生がパソコンを前に条理学の資料を整理している。
そこに、ツケッパにしているスカイプを通してチャットメッセージが入る。

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バ:まあね。だからってその指し示すところの
  ものが変わるわけでもないし。
ぼ:それはそうですけど。
バ:例えば荘子のことを「そうじ」と読んだか
  らって荘子が掃除や相似や送辞になるわけ
  でもなく、
バ:「そうし」と読んだからって草紙や創始や
  壮士になるわけじゃないからね。
ぼ:だから読みはいい加減でも良い、と。
バ:まあちょっとくらいはいいんじゃないかな。で、混淪鬱浡の意味はわかった?
ぼ:あ、いや、それはなんというか、
ぼ:なんとなく、みたいな…
バ:その「なんとなく」というのはどういう感
  じ?
ぼ:なんか「コンリンっ☆」で「鬱墓痛〜●」
  な感じかなあ。
バ:なにそれ?説明になってないよw
ぼ:すいません。実は良くわかりません。
バ:素直ってのはいいことです。
ぼ:あざーっす。

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バ:で、知りたい?
ぼ:え?何をですか?
バ:だから「混淪鬱浡」のこと。
ぼ:あ、いや、もう今日は遅いし、明日また朝
  早くから仕事が…
バ:まだそんなに遅くはないでしょ。
バ:どうせこれからフィリピンのかわいい女の
  子とスカイプ英会話レッスンしようって魂
  胆に決まってる。
ぼ:な、なんでそれを…
バ:ふっふっふ。達観すればそのくらいはお見
  通しなのだ。
ぼ:でも明日の仕事が早朝からってのはほんと
  ですよ。
バ:はいはい。
ぼ:なんか信用ないなあ。
バ:さてじゃあ、「混淪鬱浡」の意味を説明し
  てあげよう。
ぼ:え〜、なんか無理矢理じゃないですか?
バ:若いフィリピーナちゃんにウツツを抜かし
  てるよりはよっぽどためになる。

  研究するべきものは?
ぼ:え〜っと、自然、とかですか?
バ:まあ、そういうことだね。で、なんでだと
  思う?
ぼ:すべてのもののでどころですから。母なる
  自然ですよね。
バ:あ。なんかすごいこと思いついた。今。
ぼ:え?なんですか?
バ:母→女→アンジェリーナ→ジョーリ!
ぼ:あの、ぼくそろそろ…
バ:いやいや、すまんすまん。m,_,m  
バ:別にふざけたワケじゃないんだが…
バ:というか、ここはドッカ〜ンとウケてもい
  いハズなのでは?
ぼ:すごいことっていうから何かと思えば…
バ:いや、これはすごいだろ。「母」が「条
  理」に繋がるってのは。
ぼ:単なるオヤジギャグじゃないですか。
バ:これが単なるオヤジギャグに見えるうちは
  キミもまだまだだね。
ぼ:またそうやって誤摩化す…。
ぼ:困った時にそうやって「まだまだ」とかいうのは先生の悪い癖だと思います。

バ:あ、それそれ。その「癖」について話そうと思ってたところだったのだよ。

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ぼ:アンジェリーナです。
バ:アンジェリーナ…、ジョリー?
ぼ:んなわけないです!
バ:wwwww
ぼ:先生、笑い杉。
バ:んじゃ早速、混淪鬱浡についてだけどね、
ぼ:早速って…
バ:というか、まずは条理のことを説明しな
  きゃ。
ぼ:出ましたね。ジョーリ。
バ:アンジェリーナ・ジョーリ!!!
ぼ:orz
バ:ダメ?
ぼ:かなり…
バ:まあジョリーはともかく、ジョーリがわか
  らなきゃコンリンウツボツもわからんから
  ねえ。
ぼ:そんなもんですか?
バ:そりゃそうです。で、ぼっけー君に質問。ぼ:はい。
バ:もしキミが学者になるとしたら、真っ先に