書かなきゃから 書きたいへ  |  kazueda

 
 
 
 

UEDA学習塾

書かなきゃから
書きたいへ

 
 

2011 夏号(創刊号)

photo|Aiko

文集よりも自由に子供達の作品を紹介したくてWEB版の作品集を作りました。文集と違うところは全員の作品が載るわけでないこと。文集で紹介できるのは、各自1作。しかも怠慢な塾長の蝸牛のような作業スピードもあり、1~2年に1作です。これでは毎週のように書きまくっている生徒の作品が埋もれてしまう!ということで、文集よりは肩の力をぬいて、申し訳ありませんが予算もかけずに、「書かなきゃ、から書きたいへ」のWEB版を季刊誌として創刊します。塾長の作業スピードが遅いことには変わりはなく、本当に季刊誌となるのか、どんな内容になるのか、全く読めませんが、乞うご期待ください。

UEDA学習塾

 
 
 

書かなきゃから
書きたいへ

 
 
 
 
 

photo|Aiko

CONTENTS

二人ぼっち ・・・ REI
どこまでも ・・・ REI

レクイエム ・・・ 彩夜

笑いの神社 ・・・ YURI

おんぶのかげ ・・・ MANAMI

ガード下の小さなお店・・・KAORI

光 ・・・ TOMOYUKI

初めて友達ができた。
毎日毎日、遊んだ。
かくれんぼに、追いかけっこ。
いろいろした。

楽しかった。

嬉しかった。

 

3

書かなきゃから
書きたいへ

「二人ぼっち」
作:REI

ぼくは金魚のキンタだ。
前は水そうに一匹だった。

ある日、新入りがやってきた。
真っ赤な色の金魚だ。
そのこの名前はキンチャン。

書かなきゃから
書きたいへ

4

だけど、キンチャンは日に日に弱っていった。

かくれんぼも、追いかけっこも
できなくなった。
でも、キンチャンはいつも
笑ってた。

ある日、キンチャンが
「ありがとう。」って言った。
それから、キンチャンは
動かなくなった。

キンチャンはいなくなった。
また一匹になった。
でも、
ぼくは一人ぼっちじゃなかった。
キンチャンは、
ぼくの中にいる。そして、
いつもぼくに笑いかけている。

 
 

5

ある日、ぼくは初めて飛んだ。
でも、太陽は遠かった。

いっぱい、いっぱい
羽をはばたかせたけど、
届かなかった。

くる日も、くる日も、
くる日も、くる日も、

「どこまでも」
作:REI

蝉の命は短いんだ。
太陽を見てから7日間で死んじゃう。
でも、ぼくは太陽になりたかった。

ぼくの名前はセミゴロウ。
夢は太陽になること。
だから、いつか太陽の所に行く。

書かなきゃから
書きたいへ

 

書かなきゃから
書きたいへ

6

そしてある日。
その日もまた飛んだ。だけど、
羽が上手く動かなかった。
そして、電柱にぶつかった。
羽から力が抜けた。

太陽がまぶしかった。

ぼくは、もうだめだと思った。
だけど、
体がふわっとした。
羽をはばたかせたら、

また飛べた。

どこまでも、どこまでも。
そして、
ぼくは太陽になった。

 

書かなきゃから
書きたいへ

7

「なるほど…。はい、お電話かわりました。」
 ジコは電話を切った。短い電話だ。
「交通事故?」
 俺はタバコ片手に聞いた。
「俺の担当だからな。」
 そう言ってジコは立ち上がり、隣の部屋に首を突っ込んだ。
「木下、北山総合病院。」
「北山ですね。古都先輩来ないんですか?」
「必要なら呼べ。」
「わかりました。」
 木下がたち上がるのが見え、ジコの首が戻ってきた。
「お前行かねぇの?」
 俺はタバコの煙を吐き出して言った。
「何だよジガイ、にらむなって。」
 ジコは苦笑した。

「レクイエム」― 1、山名正紀 ―
作:彩夜
 なんで。どうして。
 俺に向かって時に呟かれ、時に叫ばれるその声は、俺を通りぬけて誰に受け止められるわけでもなく虚空へと消える。
 だから俺は探してやるんだ。その答えを。

 ピリリリリ、ピリリリリ。
「はい、葬儀屋『御魂』です。」
 葬儀屋だっていうのに電話が携帯の如き軽い音で鳴るのはいかがなものか。いつも俺は思う。
「少々お待ち下さい、担当にかわります。…古都さーん、お仕事です。」
 保留ボタンの間に呼びかけられたのは同僚のジコだ。
「はいよ。病院?齢、人数、性別は?」
「ええ。二十五歳男性、一人です。」

 

書かなきゃから
書きたいへ

8

「オレが行く程のものじゃなさそうだ。」
「交通事故、突然の死。遺族の悲しみは有り余ってんじゃねぇの?」
「それを木下に見てもらうんだ。」
 思いのほか真剣な声に俺はジコを見上げた。タバコの灰を落とす。
「交通事故は突然だ。〈レクイエム〉が要るような件がいつ来てもおかしくない、だから、」
 今は行けないのさ、ジコはそう言って座った。
 葬儀屋の業界には〈レクイエム〉と呼ばれる特殊な者がいる。普通の葬儀屋と同じように式を準備し行いながら、死者と生者の間に橋をかける。〈レクイエム〉には死者の言葉が聞ける。当たり前だ。俺は胸の中で呟いた。〈レクイエム〉は全員、一度死んでる。それぞれ自分が死んだ原因を通り名とし、その葬儀を担当する。だからジコは交通事故で死に交通事故担当、ヤマイは病気、ロースイは老衰、カジは火事、タサツは他殺。そして俺…ジガイは自殺担当だ。

 一般の社員は〈レクイエム〉を上司とはするが正体は知らない。だから社員の前では通り名をもじって名字っぽく名乗る。だからジコは『事』を変換して古都。俺は短くなったタバコを灰皿でつぶした。
「ジガイ、お前さ、タバコやめろよ。」
 後ろからカジが俺の頭をこづいた。
「あ?」
「社内ならまだいいけど、外に出たらマズいぞ。お前見た目十八歳のままなんだから。」
「うるさい。ちゃんと年とってりゃもう二十五だ。」
 俺は新たな一本に火をつけた。手元で銀色のライターが光る。〈レクイエム〉は死んだ時から老いない。俺はずっと十八歳のままだ。ちなみにカジは三十歳、ジコは四十二歳。
「それ言っちゃあ、ダメだね。」
 ジコは苦笑した。
 ピリリリリ、ピリリリリ。今日は電話が良く鳴る日だ。近くにいたカジがとった。