Our whereabouts 4  |  Matsumoto031

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第4話 『ぼくたちはどこへ』

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部屋のドアが開く音がした。持ち主が帰ってきたんだ!!
ぼくは懸命に【静かなおもちゃ】に戻り、手の模型も【動かないデッサンの手の模型】に戻った。
持ち主がぼくが抜け出したおもちゃの箱をどこかへ運んでいった。
捨てるのだろうか。
ついにその時がきた、とぼくは悟った。ぼくも捨てられた魔法のステッキさんと同じ場所に行くのだろうか。
しかし不思議と、ぼくの心は落ち着いていた。もう怖くないと思った。

だって、思い出せたから。持ち主のあの子との楽しかった思い出を。あの子に音楽の楽しさをひとときでも教えてあげることができたことを。
ぼくは、自分の存在を全うすることが出来ていたんだ。
それに気づけたから、もう十分心が満たされていた。

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手の模型くん、さようなら。そして、ありがとう。


         ポロン♪


持ち主がぼくを運ぼうとしたとき、小さな音が響いた。

ぼくははっとした。
『しまった!!電源スイッチが入ったままだったんだ!!』

持ち主もその小さな音に気づいたようだった。それから、ぼくの鍵盤に手を置いて音を鳴らした。

「おぉ!!まだこのピアノ音鳴るんだ!!懐かしいなぁ」

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持ち主はぼくを弾き始めた。
あの頃よりも手は大きくなっていたけれど、
伝わってくるぬくもりが懐かしかった。

音色が部屋中に再び響く。
なかには聴いたこともない曲もあった。

もうピアノを習っていたあの頃よりもずっと下手になっていてぼくを笑わせた。
ピアノのキイは小さいから弾きにくそうだった。

でもぼくは嬉しかった。
こうしてまた、あの頃と同じように遊べたことが。

これ以上ないくらい幸せだった。

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その後。

ぼくは綺麗に拭かれて、袋にいれられた。

ぼくの想像していたごみ袋とはちがっていた。

これからどこへゆくのだろう。




きれいなおとがきこえるばしょだといいな。




*END*

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【END】

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作成日:2011 年 07 月 28 日

  • 著者:Matsumoto031
発行:Matsumoto031

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