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第1話 『音色の行方』

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ぼくはおもちゃのピアノ。キイを叩けばポロロンポロロン愉快な音を響かせる。
ぼくはものまねだって得意。ピアノ以外の音だって出せるよ。
ボタンひとつでバイオリンやトランペット、大太鼓やシンバルの音、さらには動物の声だって出せるんだ。
じどうえんそう機能だってついてるから、いろんな国の音楽だって奏でてみせるよ。

ぼくのおかげで、持ち主はピアノを習うようになったんだ。「将来はピアニストになる!!」って夢まで与えることが出来たんだ。とってもうれしかったなぁ。

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そんなぼくの持ち主は、ピアノを習うようになってからぼくにはあまりさわらなくなった。
おもちゃではなく、ほんもののピアノでピアノをひく練習をしていた。
ぼくはすこし悲しかったけど、大丈夫だった。
持ち主が音楽を楽しんでいることが、
ぼくにはうれしいことだったから。

ぼくはピアノから響く音色に耳をかたむけることが大好きだった。

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だけどその美しい音色も、いつからか全く聴こえなくなった。
持ち主はピアノのレッスンの厳しさに嫌気がさして、ピアノ教室までやめてしまったからだ。
そして持ち主の将来の夢が変わった。
もともと絵を描くのも好きだった持ち主は、美術関係の仕事につきたいと考えるようになった。
机には五線譜のノートではなく、美術の技法書や画材が置かれるようになった。

そしてぼくは、暗いおもちゃ箱へと放り込まれるようになった。

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【第2話に続く】

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なんて静かな場所だろう。

聴こえるのは、ほかのおもちゃのささやき声くらいだ。

そこに楽しい歌や音楽はない。



ここはとても暗くて寒い。

作成日:2011 年 07 月 28 日

  • 著者:Matsumoto031
発行:Matsumoto031

©Matsumoto031 2011 Printed in Japan

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