静寂のグレイ  |  aoiy

 静寂のグレイ

 

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 卓上ゲームで最もポピュラーな「オセロ」は、白と黒が互いを脅かし合うことが、一番の面白さかもしれない。
 より多く自分色に染めるマスを選ぶか、
 相手の裏を読んでじっくりと攻めるか。
 
 でも、そのうちマス目はどんどん無くなり、何色に覆われるのかが分かってしまうのが、実はとても寂しい。

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 静寂のグレイ

 なぜそれが寂しいと思うのか。
 今になってやっと、その意味が分かったのだ。

 物事には、白でも黒でもない、はっきりとしない状態や、関係もあるのだということ。

 はっきりさせようとすると、先が見えてしまう。
 全てをあからさまにすることで、本当は見たくない物事が、見えてしまうかもしれない。

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 静寂のグレイ

 あなたと私は、違う時間を生きてきたし、違う世界を見てきた。
 でも、それぞれの其れが、良いか悪いか、ということではないのだ。
 それでももし、私の足跡の中にあなたが過ちだと思うものを見出したら、それはそれでいい。私は、あなたの思いに対して、否定も肯定もしないだろう。

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 静寂のグレイ

 なぜなら、どんなに悔いても、過去は消すことは出来ないのだ。
 だから、私たちは、その過去に未来を重ねて生きていく。
 ただ、その積み重ねを、1人だけじゃなくて、きっと誰かと分かち合えたら、どんなに幸せだろうと思う。

5

・・・・私は、東京の地下鉄よりももっと複雑な地図を広げて、道に迷っていた。なんとなく行きたい方向は分かっているのに、どうやら其処へ向かう為の「靴」を、履き替えなければならないらしい。
 しかし、靴屋の店主が言った。「キミは曖昧なんだ」と。
 「だから、どんな靴を履いたらいいのかわからないだろうう?」。

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 私は静かに涙を流した。
 きっと、その通りだと思ったから。
 でも、自分が履いている靴を、捨てる気にはなれなかった。だって、私に馴染んでいるんだもの。
 新しい靴に履き替えたら、きっと慣れなくて、靴ズレを起こしてしまうだろう。
 それも、言い訳だと思われるなら、それでいい。
 結局、何が正しいかなんて、後になってみないとわからないのだから。

 心の整理とかいう、綺麗な言葉があるけれど、本当の意味での其れは実はとても時間がかかることだし、そのために私は、立ち止まってはいられない。少しでも前へ進もうと動き出すことで、同時に整理はされていくものだと思うから。
 だから、私は曖昧なままでいいんです、と、その靴屋を後にした。

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 手を延ばせば触れる事が出来るのに、程よい距離を保って、相手に踏み込みすぎないこと。手に入りにくいものを追い続けること。一瞬でも、隣に寄り添うこと。誰かと重なる時間に、制限があること。
 全ては分かっている。だからこそ、分かつのだ。

 曖昧とはなんて優しく、儚げで、穏やかなんだろうと思う。まるで凪いだ海のように、静かで優しく在るから。
 

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