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共に生きるということ

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 或る女:

 「片想いと言えるほど、純粋ではなかった時期も、あります。そりゃあ、ある時は、彼を完全に忘れたことも、ありました。
  思い出すこともなく、新しいヒトと出会って、レンアイというものをして、でも、その時々の理由で、別れていきました。
  彼(ら)との交わりは、時にそれが永遠のものであってほしいと願うこともあれば、・・・・一時の快楽に溺れたことも、ありました。

 でも、そうやって生きていながら、私は、結局「彼」を忘れることが、なかったんです。

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 ・・・彼と出逢ったのは、もう7年も前になります。私は、その時既に離婚していました。彼の方は、「ずっと前から離婚したい」と思っている奥さんと、ヨークシャテリアと暮らしていました。
 初めて逢った時は、暑い8月。あまり下品にならないように程よく襟元の開いたシャツを私は着ていました。ちょっと照れくさそうにしながら私の手を握る彼の視線が、時折其処へ注がれていたのを、今でもよく覚えています。

 いつも、午後からの待ち合わせ。
 ランチの時は、彼は必ずビールを飲んでいました。黒が好きだそうです。

 お酌をするのが苦手な私を気遣って、彼はいつも手酌ですいすいと飲んでいました。

 それから、裏通りのホテルで、夜を過ごしました。

 それが、私たちの時間の過ごし方でした。

 でも、あの時は、私もまだ考え方が若く、いつしか彼に物足りなさを感じていたんですね。
 気の利いた台詞も言わない、
 指使いの苦手な、彼。
 本当は、彼にとって私は「心の拠り所」となるべきだったのに、私には、そんな心持ちが足りなかったのです」。

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 或る男:
 「あの頃は・・・・本当は、キミに出逢ったことで、真剣に離婚を考え始めていたんだ。
 でも、現実は仕事に追われて・・・なんて言っても、言い訳にしかならないだろうけど。
 キミの気持ちは、本当に嬉しかったし、僕のそれまでの生活を、大きく変える出逢いだった。それだけは、間違いないんだ。
 でも、実際、僕は行動にする勇気が、無かっただけかも、しれない・・・

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 それでも、僕が不器用なせいで、キミを悦ばすことが上手でなかったことが、いつも申し訳ないと思っていた。
 キミが帰った後の僕は、本当は、情けなさとせつなさで、溢れていたんだ」。

 ・・・・キミと別れてから、僕は仕事に忙殺され続けた。新店舗の拡大、通販事業への着手、スタッフのマネジメント。
 確かに、経営責任者だが、いつしか僕の力量以上の課題が、表面張力のように満ちて、破裂しそうだった。

 ただ、
 その課題に押しつぶされそうになった時、その節目で
 思い出すのは、キミのことだった。
 キミの声、
 脚の形の良さ、
 手をつなぐ時はいつも僕の手を指でなぞる仕草、
 僕の下で、シーツを握る瞬間・・・・

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 ・・・・それが、「たまたま男と女だから」ということなのか、それとも、男と女だから、惹かれあったのか。
 それは、お互いには解らない。

 この世には、元々一つの魂を別け合って生まれてきたという存在が、在るのだという。
 その相手には、昔から知っていたような親近感に似た感覚をを覚えるのだそうだ。

 それとは別に、肉体を持つ「前」の魂の次元から、出逢うことが決められている存在も、在るのだという。

 
 その「女」と「男」が再会をしたのは、別れてから5年後のことだった。

 お互い、仕事上の立場が変わり、歳も取り、少しづつ価値観も深みを増していた。
 だからこそ、再会するには充分な「時間と空間の隔たり」だった。

 時の流れは、ヒトとの関わりを、時には和らげてくれるものなのだ。

 

 

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 或る女:
 「私は、再会して改めて確信したの・・・・
 あなたのことを、今でも忘れていない。
 あなたのことを、一番大切な存在だということ。
 あなたは私にとって、唯一無二であって、他の誰かで替わりになるものでもなくて、たとえ、私が他の誰かに抱かれていても、思い出すのは、あなたの強くて温かい、
 その厚い手であるということ・・・・」。

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 或る男:
 「それから、僕がしばらく連絡を取らない間、温めていたのは、キミを思い切ってドライブに誘うことだった。
以前、夏のある日、キミが1人でふらりとやってきたことを聞いて、僕はびっくりしたよね。
 前もって言ってくれれば、いろんな所を巡って、おいしいものでもご馳走したのに、と言うと、キミはびっくりしていたね。
 だから、今度は予定を立てて、改めて楽しんでほしいと思っていたんだ。

 ・・・・キミと一緒にいることが、自分にとってもどれだけ元気をもらえることか。

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 キミの笑顔を、あの時、再会して見て、僕は感じた。
 あの数時間が、これからもまた、訪れますように、
 その繰り返しが、永遠でありますように・・・。

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 新幹線の止まるA駅から、彼女は気を利かせて在来線に乗り換え、小さな駅で降りてくれた。
 136号を南下していく。
 僕にとっては走りなれた道だけど、その日は特別だった。

 CDを作る暇すらなくしてしまった僕は、古いMIXでごめん、と言いながらラテンハウスを流す。彼女はにこにこしながら、あぁ、これ、カフェでたまたま聴いた時は、いつもあなたのことを思い出していたのよ、と話す。
 彼女は楽しそうにリズムをとりながら、僕にとっては当たり前の景色を、とても興味深そうに、一つ一つ指さしながら感動してくれるのだった。

 ・・・キミとこうして眺める景色は、
 キミと出逢う前も、
 果たしてこれほどに美しかっただろうか?」。