トルコライス  |  LEINA

 

~私と紗希と陸の関係~

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~私と紗希と陸の関係~

 

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~私と紗希と陸の関係~

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 私は思いを打ち明けることができないまま、ひそかに失恋の気持ちを抱いていた。 
 今でもまだ彼のことは気になるが、親友の彼氏だという理由で身を引いていた。
 それが、まさかのこの展開。彼は、決して女をとっかえひっかえするような男ではない。私に言った「一緒にいたい。」という言葉も、酔っているとか、思いつきだとかではなく、彼の中で悩みぬいたあげく出たもののように思えた。
 どうしていいか困惑しながらも、とりあえず私は彼に聞いた。
「紗希とはあんまりうまくいってないの?」
 「うん…なんか疲れるんだ。話しても価値観が合わないことが多いし、お互い関心がなくなってきている感じがして…もう最近はほとんど会ってない。」
 「そうなんだ。」
 「あのさ、俺のこと玲奈はどう思ってるの?」

 大学2年の冬のある日。この日は東京に初雪が降った。
 「本当は玲奈と一緒にいたい。」陸はそう言って、うつむきながら、私の手をそっと握った。予想もしていなかった展開に私は気が動転した。
大学のクラスの中の良いメンバーで紗希の家で宅飲みしている途中で食べ物が足りなくなって二人でコンビニへ買い出しに行った帰り道のことだ。陸はよくつるんでいるクラスの中の良いメンバーの一人で、私の高校時代からの親友、紗希の彼氏だ。以前から最近二人はうまくいっていないという話を聞いていた。二人とも忙しくて会う時間があまりなく、最近彼がそっけない態度をすると、紗希から相談を受けていたばかりだった。紗希と彼が付き合いだしたのは1年近く前。私は、実はそのころから彼のことが好きだった。しかし、その気持ちを彼に伝えようか迷ってるうちに、紗希と彼が付き合い始めたのだ。

 

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 彼は私に問いかけた。今ここで私が「好き。」と言ってしまえば、きっと彼は受け入れてくれるだろう。彼は、明らかに私を待っていた。
 ただ、彼とそういう関係になれば、親友の紗希を裏切ることになる。お互い何でも正直に言ってきた関係だし、相談も受けている手前、紗希にとっては大きなショックなはずだ。
 どういう答えを出せばいいのか、高まる鼓動。沈黙。
 私は、彼が私にそうしたように、そっと彼の手を握った。
 「私に少しだけ時間をちょうだい。」
 「うん。さっきは早まっちゃったけど、俺も、お互い時間が必要だと思う。」
 その後、紗希の家に帰るまで、お互い何も話さなかった。家に着くと、何事もなかった様に、宅飲みを再開した。「明日バイトあるから始発で帰るね。」5時すぎに眠そうなみんなを後にして、私

は帰宅した。本当はバイトなんてなかったが、陸を意識してしまい、その場にいるのが辛くてバイトを口実にした。
 家につき、シャワーを浴びて、ベッドへダイブ。ぼーっと天井を見ながら昨晩のことを思い出していた。私は、陸と紗希がまだ別れていないという状況で、声に出して「陸のことが好き。」とは、言えなかった。まだ紗希との関係にけりをつけていない陸を受け入れることもできなかった。でも、あの場で私の気持ちを全く伝えなかったら、後悔すると思った。だから、「私も本当は陸と一緒にいたい。」の意味をこめて、黙って彼の手を握った。正確な返事をしない私に、紗希と別れてまで、向かってきてくれるかという、陸の覚悟も見せて欲しかった。ただ、けじめをつけなきゃいけないのは陸だけじゃない。私だってそうだ。紗希に嘘をついたまま、陸に好きって伝えることはできない。紗希には何でも正直に言ってき

 

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けど、大丈夫?」
 「あのね、紗希に言わなきゃいけないことがあるんだ。」
 「何?ゆっくりでいいから言ってごらん。」
 「私ね、紗希を失うのが怖くて今まで自分の気持ちを押し殺してきたのね。紗希に陸のことを相談されていたし、違う人を好きにならなきゃって。でもやっぱりダメで。紗希を傷つけるのは嫌だけど、紗希に嘘をつくのも嫌だから、言うね。私、陸のことが好きなの。」自然と涙が出てきた。
 「…うん。なんとなくそんな気がしてた。」
 「紗希、私…本当にごめん。」
 「それは私に言えなかったことに対してのごめん?それとも陸を好きになっちゃったこと?」
 「紗希に言えなかったこと。紗希は何でも私に言ってくれてたのに。」
 「陸を好きになっちゃってごめんって言われた

 

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たけど、このことだけは、今まで紗希に嘘をついてきた。
 「玲奈は気になる人とか、好きな人いないの?」
 「うん。あんまり興味ないやぁ。紗希がいるし!」
 「でも私とは結婚できないでしょ笑」
 「確かに笑 紗希には陸がいるしね。」
 「まあ、先のことなんて誰にもわからないけどね~。」
 去年は何気ない会話だったはずのこの会話が頭の中で何度も繰り返された。陸に伝えるよりも先に、紗希に伝えなくちゃ。高校の時から私を支えてくれた紗希を失うなんて考えられなかった。考えたくもなかった。だから、紗希に正直に気持ちを打ち明けよう。私は決心した。
 次の日、いつも通り紗希と放課後お茶をした。
 「玲奈、どうしたの?朝から元気ないみたいだ

 

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持ちを伝えてあげて。彼もつらそうだったから。普段3人でいるときから、私2人は合うんじゃないかなって思ってたの。でも、私の親友と彼が付き合ったら、2人が離れていっちゃうような気がして。陸のことも好きだし玲奈のことも好きだし、今思えば私、独り占めしちゃってたね。」紗希も泣いていた。
大学入ってからはずっと3人で行動してた。二人きりでは合わない陸と紗希の波長も、私がいると自然と会うことが多かった。3人で調度よかった。
数日後…
「待たせてごめんね。陸、私も陸のことが好き。」
「俺の方こそごめんな。これからは、彼女としてよろしく。」
 私たちは付き合い始めた。お互い身辺整理をした後の交際は、順調だった。私も陸も、やっと実った恋に幸せを感じていた。紗希とも、今まで通

らね、私怒ってたと思う。だってそれは、ただ自分が罪悪感を感じたくないから言う謝罪だから。でも、私に本当の気持ちを言えなかったことを玲奈が謝ってくれるのは、玲奈が私を思ってくれるからこそだよね。」
「紗希、これからも私と友達でいてくれる?」
「もちろん。高校時代からの親友でしょ?」   「ごめんね。ありがとう。」
「玲奈、昨日陸に告られたでしょ?さっきね、陸に呼び出されて別れようって言われたの。玲奈にも相談乗ってもらってたけど、やっぱり私たち波長が合わないって感じてきてて、私もそうしようって言ったの。その時、玲奈に気持ちは伝えたけど、OKはもらってないって陸から聞いて安心した。」
「…うん。彼には少し時間が欲しいって言ったんだ。」
「玲奈、私のことは構わなくていいから、陸に気

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 「よりによってなんで私がとんかつなの!?」
 「多分、紗希が食いしん坊だからだろ。」 
 「食いしん坊で悪かったわね。」
 「まあまあ。落ち着いて二人とも~。」
 私たちはその後の大学生活も3人で仲良く過ごした。ナポリタン、ピラフ、とんかつと一見意外な組み合わせだけど、とっても美味しいトルコライスみたいに。





 ※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

り親友という関係を続けられた。紗希は、陸と別れたことで、かえって気が楽になったようだった。

 私と陸が付き合ってから数か月後。三人でトルコライスを食べている、あるランチタイム、生き生きとしている紗希に向かって私は言った。
 「紗希、なんか最近雰囲気変わったね。」
 「ちょとね、気合入れてるの!もうすぐ春が来るし、私にも新しい出会いないかなぁって笑」
 「俺がアドバイスしてやろうか?」
 「元彼になんて頼らなくても彼氏の一人や二人作れますよーだ!」
 「かわいくないなぁ。まぁ、男がうじゃうじゃ寄ってきたらあんまり俺たちといれなくなるから嫌だし、ちょうどいいか!」
 「紗希はトルコライスに欠かせないとんかつだからね!」
 

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トルコライス

 
トルコライス
作成日:2011 年 05 月 13 日

  • 著者:LEINA
発行:LEINA

©LEINA 2011 Printed in Japan

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