Shigotobiyori  |  yoshikatsu

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 それまでいろんな仕事をしてきて、たとえ辞めてしまっても経験やスキルというのは蓄えられてきたわけで、そういうものの中から興味のあること、好きなこと、出来ることを集約して形になったのがこのお店という訳です。
 ひとつだけ、カフェを始めるためにやったことがあります。それは料理を学んだことです。約1年ほど友人が経営しているスペイン料理のお店へ料理の修行に行きました。

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 スペイン料理にこだわっていたというわけではなく、そいつはすごく料理が上手かったんです。どうせなら上手い奴に習いたいじゃないですか。それで、そこで料理を学ばせてもらいました。それだけはカフェを始めるという目標のための経験でした。あとはその前からありました。
 

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セルフビルドについて

 それから1年半ほど物件探しに費やしました。その時には子供もいたのですが、妻が看護師の資格を持っていますので、僕が収入のない間は妻が仕事をしたりして食いつなぎました。三十路で妻と子もいて無職で、どうするんだといわれそうですが、目標があって期間限定ならなんとかなりますよ(笑)。

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物件の条件としては職住一緒というのが絶対条件で、あと庭があること。この条件で探していました。一軒家に生まれ育ったせいか、ほんの一部でもいいから地面に直接接する場所がないと落ち着かない性分でして、だからマンションとかは耐えられないなと。地球の一部、大地の民でいたいんだと、そこはこだわりました。大地や風、自然を感じることができる場所を探して。

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 最近はいいお店も増えてきたので、ここにしてよかったなと思っています。
そうやって見つけたこの物件、もとはかなり奇抜な建物だったんですが、余計なものを全部取り払えばいいものになるなと思う事が出来たので、ここに決めました。セルフビルドと言って、解体や改築などの作業はすべて自分の手で行いました。全部自分でやってやろうと。

 京都で育ち、その後、小学校に入る前に山口県へ引っ越しまして、また京都に戻ってきたという経緯があるので土地勘と言うか、京都のどの辺りがどういう感じというのは感覚で分かります。左京区にこだわっていたわけではないのですが、のんびりとした雰囲気が好きで、いいお店も今ほどではなくてもポツポツとあって、なんとなくこの辺りがいいなと思っていました。一ついいお店ができると、その周りにお店ができて、盛り上がってくるじゃないですか。

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解体には解体の、壁を張り替えるには張り替える作業のノウハウというものがあり、専門書を本屋さんで立ち読みしたり、昼に建築現場で休んでいる作業員の人に「この壁はどうやっているの?」と直接聞いてみたりしました。家を一軒建てるのにもたくさんの専門分野、およそ30から40の専門領域があって、それぞれのプロフェッショナルがいる。奥が深いですよ。

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 設計図のようなものは先に用意していたのですが、作っている過程でこうした方がいいなと思ったところは、その都度変えていくという事が出来たのもセルフビルドをしてよかった点です。例えば、一階に大きな窓を作る予定だったのですが、その場所から見えるのは隣の敷地にある駐車場だったのであまり景色は良くないなと、現場に立ってみて初めて気付づいたのです。だったら高い位置に天窓を作って、そこから光を取り込めるようにしたらお客さんが席に座った時に光を感じることができる。

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 小さくてもあたたかい太陽の光が降り注ぐ窓がある方が、駐車場が見えるより席に着いたお客さんにとって居心地がいいだろうなと思って。そういう工夫を挟み込めたので、職人さんに任せっきりで作るより良かったと思います。職人さんに任せて後悔するのも嫌だったし、「ああじゃないこうじゃない」と現場で指図するのも苦手だった。でもどうしてもこだわりたかったので、思い通りにやるには自分でやるしかなかったのです。

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 自分でやったので電気や水道管などどれがどこを通っているかとか、この建物に関するすべてを把握しています。費用はかかりましたが、それでも人件費がかからなかったので、職人さんに任せっきりで作る半額以下で出来たと思いますよ。半年ほどかかりっきりだったので、その間の収入はなかったのですが、その浮いた金額が収入だったと思えば、なかなか悪くないと思います。

フローリスト、花を通して人生に関わる仕事

花屋で働いていた経験を生かして、この建物の駐車場をはさんだ北側に花屋をオープンしました。当面のところはこの店を軌道に乗せることで頭がいっぱいです。花が登場するのって冠婚葬祭すべてのシーンなのです。フローリストは花を通して、本来なら関わるはずのない人の人生節目の大事な場面に立ち会う事が出来るんです。お葬式のときなんかもそうで、前日にお花を届けるのですが、お葬式の前日と言うとお通夜なんですよ。

 お通夜で、夜遅くもうほんとに身内の方しか残っていらっしゃらない。お通夜の日、独特のムードの中で身内の方が「ああだったね」、「こうだったね」とその人を偲ぶ会話をされていて、そこに部外者の僕一人、黙々と花を活けているんです。花を通して人生を見ることができるというのは間違いなくこの仕事の醍醐味です。

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それを通して、いろんな人と関わることができる。

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未来は高原カフェ!?

 僕にとっての仕事とは、社会と自分を繋げるインターフェイスだと思っています。仕事をすることによって、社会と関わりを持つことができる。自分がどんな仕事をし、どんな人間かという事を示すことで社会の方からの自分に対する接し方も変わってくるものだと思うのです。だから、やりたいことがあるんだったら、やってみること。自分はこういう考え方をしていて、こういう事がしたいのだと示してみることが大事だと思います。

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