high-yami  |  MorisACHIO

 
 

きみへ。

1

詩編ハイヤミ

text|MorisACHIO

       リビドー×タナトス

ベース弾きの男の娘を愛でてたい
安い牛肉は食べたくない
できれば、なにも食べたくない
女装っコの食事姿を眺めてたい
それをYou Tubeにアップしたい
朝はLSDで酔ってたい
TDLなら尚良いか
ついでだしSEAにも寄っていこう
15のJCに告白されたい
したら、一生立ち直れないくらいに傷つけたい
そのあとに、優しい言葉をかけてみたい
夜はいらない 夏もいらない 冬は嫌い
妹の右手を借りたいな
「よくある言葉遊びだね」と言われたらヘコむと思う
想像力、Base Ball Bearのアマチュア音源、田島昭宇の生原稿、全部ほしい
誰かの日常を壊したい
不謹慎と叱られたってしかたがない
みんながぼくを忘れたら、今にも飛んでしまいたい

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詩編ハイヤミ

2

       おとなにはならないで

厭世感たっぷりに微笑むぼくを諌めた、そのあとに
「私はおとなになんてなる気はないから」同情っぽく囁いたから
その一言だけで虜になって
ほらごらん。檻のなか、象がぼくらを笑ってる。明日の意味すら知らないくせしてさ
「明日は我が身ね♪」隣に歌うハスキーヴォイス「いつかは死んでしまうのね」
そうだね。ほら、あそこにアイスクリーム売ってるよ
ねえ。きみは何味が食べたいの?
手をつなごう。同じ歩幅で歩いていこう
せめて、きみがおとなになってしまう、その日まで

       ぼくと15歳の実験

今にも踏み潰されそうな自尊心の青虫を
2つに切り開き、指で剥いたら
粘膜に覆われた蝶は飛びたつか?
消去法の恋で隣の男子をモノにした15歳の未成熟な口腔いっぱいに
羽の生えた自嘲を、これでもかってほど押しこめば
不細工に頬を膨らませ
雲ひとつない空だって飛べるだろ?

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詩編ハイヤミ

3

       おとなにはならないで2

キラキラのまぶしい声で歌ったアリスは
ひらひらのドレスを脱ぎ捨てて
隣の男子に恋をする
ぼくが15歳だったら
同い年だったら
なにか違った?
同じさ、きっと
「おとなにはならないで……」
口にだしたら、泣いてしまった
白けていく様を眺めているのは怖いから
塗装の剥げた白馬を蹴った
あの奇跡の夜が、もう嫌な臭いを放ってる
震えて尖った髪先に
あと1回キスしたら、壊れてしまう
高いところに観覧車、タナトス色に静止して
あるいは、青白の爪に手が届く距離のゴンドラか
どうせなら好きなだけ嫌えばいい
恋をして歌うことをやめた笑顔をみたときに
ここから、ぼくが笑ってやるよ
安心して、おとなになりな

詩編ハイヤミ

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4

5

詩編ハイヤミ

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           放課後

にじむ夕陽がキレイだね
クリスマスみたいに赤いだろ
屋上の縁に両足投げだし
ぼくは課題図書をパラパラめくる
だけど、内容なんて1mmも入りゃしない
見上げた横顔が目を射したから
きみは手摺に頬杖ついて
どこか遠くをみつめているね
どうやら、セカイは間違えてしまったらしい
やってきた天使の仲間が暴れてる
人類は存亡を賭けて、巨大なロボットで立ち向かう
2体のシルエットが不浄の街を踏み潰す
この場所だけがセーフティ
あの殺人ビームも届かない
心配ないよ
たとえば、チェーンソを振り回す悪魔が現れようとも
たとえば、エラいあの政治家がぼくらの権利を奪おうとも
きみだけは、ぼくが守るから
この命に変えても……なんてね

ロボットに電力を全部喰われて
ケータイの充電ができないきみが不機嫌だ
親指で閉じたフラップに作り溜息
ほらごらん
じきにセカイは終わってくれる
天使が間違いを正してくれる
頭をもがれた正義のロボットは劣勢だった
きみが両手を真横に広げた
そのまま飛んでいけそうだった
笑顔がとても眩しいね
不浄が去ったあとのゼロのセカイで
キスをしよう
2人で、新しい不浄を始めよう

text|MorisACHIO

詩編ハイヤミ

6

          空飛幇助

アリスは7度目の生理で空を飛ぶ
それから10年、ぼくは海底の底の底
ここは風が強いから、ギリギリの呼吸繰り返す
垂涎で幇助したくせ、身勝手に今も淋しい
未成熟な青い実を食べてあげられなかったことが心残りで、アリスはとっくに天使になったのに
ねえ、ぼくはおとなにはなれなかったよ
見上げれば、赤と青の月が点滅している
魚の群れにイラつき、泡を吐く
待ってて。あと5年経ったら、ぼくもいく

みてよ。胸の奥が温かい
たとえば、きみが、この夜を幸せに過ごせるとして
そのためになら、今、この場で死んでもいい
それが、ぼくの愛なんです

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詩編ハイヤミ

7

       死の色を教えてくれよ

透明な抜け殻、窓辺に残って
自己統一の平和を失いクルう夜
「いつだって、こんなのばっか」舌打ちするのがお似合いで
中也のようにはなれやしないさ
返信なんてないと知り、そのくせ必死に未練を紡いで
ごめん、と最後に3文字足したら
電源ボタン。破棄しますか、に選ぶYES
携帯みたいに折れる心だったら幸せだった
ただキレイ
キレイなだけ
それだけさ
みせかけのショーに、清潔ぶった笑顔をならべ
恋人たちが手をつなぎ、即席の恋に酔っている
被害妄想?
わかってる
不幸なのは自分のせいで
「夏をあきらめないで」テレビの中のDIVAが笑う
ねえ、ぼくは繰り返しぼくを傷つけて
あのスターの死に、ぼうとする諦めの聖夜だけれど
そうは言ったって、きみがカワイクってしかたがない

詩編ハイヤミ

text|MorisACHIO

         返信ください

いつか気まぐれに……ほんの一瞬の気まぐれと偶然に
もしも きみがこの文章を目にしたとして
想いの1%でも届いたら、生きてきた意味を見出だせる
なぜって、ぼくが生に感謝したのは きみと心が通った日が初めてだった
ここに書き連ねた一切は、きみひとりに向けて書いています
ほかの誰でもないきみに
だから、いつか、10年後でも、20年後でも、せめて1%でも、

8

作成日:2011 年 04 月 01 日

  • 著者:MorisACHIO
発行:MorisACHIO

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