Angel Eyes (下)  |  SHIZU

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Angel Eyes
(下)

 
 
 
 
 
 
 

~シャーロ博士の秘密~

 
~シャーロ博士の秘密~

Angel Eyes
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著者紹介

SHIZU(しず)

主に海外のアーティストとの楽曲制作や楽曲リリースなどの活動を行うシンガー/ソングライターの経歴を持つ。「やさしい気持ち~Angel Heart」は、ドイツと台湾のレコードレーベルよりリリースされ、コンピレーションに入って、世界に広く発売されている。

著者SHIZUのウェブサイト:
www.shizusinger.com

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この本は、
「Angel Eyes ~シャーロ博士の秘密~(下)」

です。


「Angel Eyes ~シャーロ博士の秘密~(上)」
は、コチラです↓↓

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Angel Eyes
(下)

 

第15章 敵の正体

翌朝。
シーナとヘイザの部屋で、電話の呼び出し音が鳴り続けていた。
しかし、一向に電話が取られる様子はない。
電話をかけ続けていたのは、隣の部屋のソウとトトだった。
「シーナさんもヘイザさんも、全然出ませんね・・・おふたりの邪魔はしたくありませんが・・・師匠から、早くチェックアウトするよう指示されましたし、そろそろ・・・」
「おい!ふたりの邪魔とかそういう問題か?こんなに電話しても出ないって、どう考えても変だろ!?」
ソウは怒ったように、電話を握っているトトの腕をつかんだ。
「まぁ、確かにそうですね・・・どうしたんでしょうか・・・」
トトは不安そうに、鳴り続ける呼び出し音を聞いてい

 

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た。
「なぁ、シーナたちの部屋に何とかして入れないか?何かあったのかもしれないぞ」
「ぼくたちはカギを持っていないんですから、入れませんよ・・・やむを得ない場合は、フロントに申し出るしか・・・」
その時、トトの耳元で鳴り続けていた呼び出し音が止んだ。
「あ・・・あれ?あの、もしもし?」
トトは驚いて、電話をしっかりと握りしめた。
「――う・・・ん・・・」
電話口から、小さくうめくような声が聞こえた。
ヘイザの声だった。
「ヘイザさん!?一体どうしたんですか!?」
トトは思わず大きな声を出した。
「・・・よく、わからない・・・頭が・・・くらくらして・・・」
しぼりだすように、苦しげなヘイザの声が小さく聞こえてきた。

 

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「大丈夫ですか?とにかくお部屋に行きますので、カギを開けてもらえますか?」
「ん・・・わかったわ・・・・」
電話を切ると、ソウとトトはすぐに隣の部屋のドアの前へ行き、カギが開くのを待った。
やけに時間がかかった後、やっとガチャッとカギが開くと、青白い顔をしたヘイザがうつろな目をして立っていた。
そしてドアを開けると同時に、ヘイザは立っているのもままならない様子で、床に座り込んだ。
「お、おい、ヘイザ!」
「ヘイザさん、大丈夫ですか?」
トトとソウは、座り込んだヘイザを支えるように手を回し、顔を覗き込んだ。
青白い顔をしたヘイザは、懸命に目をしっかりと開けようとしているようだが、まぶたが重くて仕方ないらしかった。
そしてトトは、ヘイザの肩越しに部屋の様子を見て、はっと息をのんだ。

ベッドのシーツと枕が床に投げ出され、窓は閉まったままだが、カーテンの半分が乱暴に引きちぎられたように破れ、だらりと下がっている。
何かあったのは一目瞭然だった。
ソウも部屋の様子に気がつくと、ショックを受けたようにつぶやいた。
「おい、これ・・・」
「ヘイザさん、一体何があったんですか?――シーナさんは?」
トトは焦った様子で、今にも床に突っ伏してしまいそうになっているヘイザを揺すってたずねた。
「シーナ・・・いないけど・・・あんたたち・・・知らないの・・・?」
ヘイザは懸命に目を開けようとしながら、そう言って眉間にしわを寄せた。
ソウとトトは、ヘイザの言葉に愕然とした様子で目を見合わせた。
「兄さん、今すぐヘイザさんの回復をお願いします。とにかく何があったのか、お話を聞かなくては・・・

頭が痛い・・・
シーナは頭痛に顔をしかめながら、少しずつ意識を取り戻しつつあった。
目を開けようとするが、まぶたが重い。
どうやらじゅうたんがひかれた床の上に横たえられているらしかったが、起き上がることはできなかった。
手も足もロープでがっちりと縛られている。
その時、聞き覚えのある声が耳に入って来た。
「――あ、はい、今は眠らせてますよ。昨夜はちょっと大変でしたが・・・あ、いいえ、売店で薬は使ったんですがね、どうやらシーナは口に入れてなかったみたいで。眠りこけてぐったりしてるはずが大暴れされて、ゲドゥのやつの方がぐったりしてましたよ・・・いやいや笑えませんって」
男は声を立てて笑った。
どうやら電話で誰かに昨夜の報告をしているらしい。
シーナは、どこかぼんやりと男の言葉を聞いていた。
「――もうひとりは薬が効いてたみたいで、まったく起きませんでしたよ。あ、シーナと一緒にいるスリ女

 

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シーナさんはどこへ行ったのか・・・」
トトは声を震わせながら、再び荒らされた後のような部屋を見渡した。
「あぁ、わかってる・・・」
ソウは緊張した表情で、再びヘイザの顔を覗き込み、
「毒でも呪いでもなさそうだけど・・・自然な衰弱じゃないことは確かだから・・・たぶん浄化の魔法で大丈夫だよな・・・」
と不安そうにつぶやきながら、トトとふたりでぐったりとしたヘイザの体を床に仰向けにした。
トトが心配そうに見守る中、ソウはヘイザの額に手をかざし、呪文を唱え始めた。

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最後はカーテンにしがみついて抵抗したけど・・・結局、何か魔法みたいな力で、気がついたら魔物に抱えられたまま窓の外にいた。
その後は、両手足を縛られて、車に乗せられて・・・そして、この場所に連れて来られて、わけがわからないまま得体の知れない薬を無理やり飲まされて、眠ったんだわ・・・
ガチャッ。
ドアが開く音がして、シーナは重いまぶたを開こうと力を込めた。
わずかに目が開いて、ぼんやりとしたシルエットが目の前に見えた。
「――やっと薬が切れてきたみたいだね、シーナ。気分はどうだい?」
軽快な口調でそう言って、ヒュートはシーナを見下ろした。
シーナはヒュートを見返そうとしたが、目をしっかり開けることができない。
「シーナって意外と強いんだね。泣きわめいて、命乞

です。えぇ、まぁ、探しはすると思いますが・・・もともと人目を避けて生きてるクズみたいなやつですからね、うまくおびき寄せてシーナと一緒に消してしまうっていうのもありですね。問題はエウル兄弟ですよ、特に弟の方は政府に知られているし、簡単には消せませんよ・・・」
・・・エウル兄弟って、ソウくんとトトくんのことかしら・・・
シーナは昨夜のことをゆっくりと思い出していた。
――昨夜・・・物音がして目が覚めたら、ワニの頭に人間の体がついたような大きくて黒い魔物が部屋にいた。思わず声を上げかけたけど、声を出す前に、すごい力で押さえられてさるぐつわをされて、声を出せなかった・・・。
そして、抱えられて連れ去られそうになって・・・。
でも、あの魔物は力は強かったけど、どこか間の抜けたような動きだったから、ヘイザがナイフで切りつけてくれればって思って・・・必死でもがいて抵抗したけど・・・隣で寝てたヘイザは全然起きなくて・・・

 

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シーナは恐怖に、身をかたくした。
「ねぇ、何か質問ないかい?たくさんあるんじゃないの?死ぬ前に、いろいろ聞いておきたいだろう?」
ヒュートは親しげに、シーナの前にどっかりと座った。
「ヒュートさん・・・」
シーナは、思い切って声を出した。
「はいはい。何だい?」
シーナは、おどけたようなヒュートをまっすぐに見た。
「わたし、全然わからないわ・・・ヒュートさんのこと、ずっといい人だと思ってたのに・・・」
そう言いながらシーナは、以前のヒュートの印象を思い出し、悲しい気持ちでいっぱいになった。
今もヒュートの笑顔や態度はまったく変わっていない。しかし、好印象を持っていたそれらがすべて、今は恐ろしく不気味なものに一変してしまった。
ヒュートはさらさらした髪をかき上げながら、微笑んだ。

いする姿くらい見せてほしかったんだけどなぁ」
ヒュートは楽しげな口調でそう言って、シーナの前にしゃがみ込むと、シーナの体を起こした。そして、シーナの瞳を無理やりこじ開け、手に持っていた目薬を点した。
目薬が入った途端、シーナの視界は一気に開け、はっきりとヒュートの姿を捉えた。
「そんな怖い顔するなんでひどいなぁ。大丈夫、今日はまだ死なないよ」
ヒュートは以前と変わらぬ人なつっこい笑顔を見せた。
その笑顔にシーナはぞっとした。
ヒュートは楽しくて仕方ないというように、べらべらと続けてしゃべった。
「僕のボスがシーナに用事があるから、今夜会いに来てくれるよ。それで用が済んだら、僕がシーナを殺す。いやぁ、楽しみだね。どんな方法がいい?やっぱり少しは痛くしないと、シーナは泣き顔も見せてくれないのかな?」

 

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「ありがとう。僕もシーナをいい子だなってずっと思ってたよ。一生懸命、偽の名前で僕を騙そうとしていたところもかわいらしかったね。僕は騙されたフリをしてたけど。うっかり“シーナ”って呼びそうになったことが何度もあったよ」
「ヒュートさんは、ずっとわたしのこと・・・知ってたの?まさか、飛行機で初めて会った時も?」
「うん、知ってたよ。あらかじめ、シーナの隣に座れるように手配してもらって、それで話しかけたんだからね」
「どうしてそんなこと・・・何のために?」
「知り合いになれば、殺しやすくなるからさ。できれば昨夜みたいな手荒なことはしたくなかったからね。でも、いつもヘイザがくっついてるせいで、シーナひとりを連れ出すチャンスが無かったから仕方なかったんだ」
「ヒュートさんは・・・どうして、わたしを殺すなんて・・・」
シーナはのどの奥からしぼり出すような声でたずね

た。
ヒュートはにっこりと笑いかけて、続けた。
「長年の恨みだよ」
「恨み?わたしが、何かをしたの・・・?」
「シーナは知らないだろうけどね」
そこでヒュートは急にシーナに顔を近付け、ささやくような声になった。
「僕もオクトルの出身なのさ。そしてあの爆発で両親を失くして孤児になり、それはそれは苦労したんだよ」
「えっ・・・」
シーナは目を見開いて、ヒュートを見つめた。
「驚いたかい?シーナだってあの爆発で孤児になったっていうのに、大爆発を起こさせる薬を作ったシャーロに引き取られ、あいつの味方になった。裏切り者なんだよ。そして長い間、シーナはあいつの薬を作る手助けをしながら、何の苦労もせずにぬくぬくと暮らして来た。一方、僕は孤児院でみじめな子供時代を過ごしながら、いつかシャーロと裏切り者のシーナに復讐