サヌキノカイジン  |  zenryu

サヌキノカイジン

 

鬼が島殺人事件

1幕1場 鬼が島殺人事件


*オープニング前の幕前で私立探偵佐久間陽子が立っている。若い女性のシンプルな部屋。二日酔いの陽子のもとに電話の音がしばらく響いて切れる。頭をたたきながら電話に向かって独り言。

陽子  「ああいやな予感。頭ががんがんするというのに。昨夜は事件が解決し久しぶりに警部と飲んじゃった。今日は1日中寝ているわ。今日は代休よ。代休」
*再び電話の音

陽子  「はいはいはい。まさか警部からじゃないでしょうね。(電話の表示を見ながら)ああやっぱり⋯。私はあなたの部下じゃないのよ」
警部  「ああ、もしもし。佐久間くん。ちょっと御足労願いたいんだが。なあに、たいした事じゃないんだが、死体が上がってね。わしの腕でこの前のようにすぐに解決すると思うんじゃが、あ、 いや、やっぱり君がいないと心細っくって⋯ じゃあねえ、まってるからねえ。現場は鬼が島」
陽子  「ちょ、ちょっと待ってよ」



サヌキノカイジン

*下手に座るラジオマンがやおら立ち上がり、メッセージを書いた大きな吊り下げビラを顔(ラジオ)から出して見せる。



陽子  「覗き込みながら)警部これは遺書じゃないよ。犯人の挑戦状だよ」
警部  「なにい、挑戦状?とすると、これはまさしく殺人事件だ。殺人事件。ど、どうしましょ、よ、よ、陽子ちゃん」



*音楽、ダンス
刑事、野次馬、死体が踊り出す。警部うろうろ。陽子は腕を組んで死体を観察。
♪事件だ、事件だ、どうする警部。殺人事件。





1幕2場 電話が切れて幕が開く。

音楽スタート


*鬼が島殺人現場。

*海岸、砂浜に打ち上げられたずぶぬれの女の死体とボート。警部が陣頭指揮。刑事達が検証中。野次馬達がまわりを囲む。
*スピーカーを頭から冠ったラジオマンが下手の隅に座っている。
*陽子が下手より息を切らせて登場。

警部  「やあ、陽子君、どうしたんだ。なぜこんなところにいるのかね」
陽子  「警部、今さっき電話でたたき起こしたじゃないの」


警部  「あ、そうか、失礼。でもわざわざ来てもらわなくてもよかった。単なる事故だった。ボートに乗っていて船が転覆したんだろう。きみの出番はないよ(服を調べながら)おや、なんだ、これは。ポケットから手紙がでてきたぞ。遺書らしいな。とすると自殺かな。なになに、カイニナレ サヌキノカイジンヨリ。へんな遺書だな」

陽子  「ちょっと警部、落ち着いたら。害者の名前はなんていうの?」


警部  「あ、そうか。害者の名前ね。ちょっとそのバッグの中を調べてくれたまえ。いかん。手がふるえちょる」
陽子  「名刺があるわ。これが自分の名刺ね。堺俊子」
野次馬 「その人はサヌキヌードルのお偉いさんだ」 
陽子  「サヌキヌードルといえば、高松市に本社があり最近急成長をとげたうどんの全国チェーン店ね」 
警部  「(気を取り直して電話をかける)もしもし、サヌキヌードルの堺俊子を至急調べてくれたまえ」
陽子  「警部、これを見て(害者の腕を示しながら)このシミは毒物反応よ。それからもうひとつのバッグから饅頭の箱が出てきたわ」
     
警部  「なるほど一個食った形跡がある。とするとこの饅頭を食って毒にやられたんじゃな。それにしても変な名前の饅頭だな。鬼のふぐり。つまり鬼のあれのことかな。御婦人方が大好きな、まるきん印の⋯」


陽子  「なにいってんのよ警部。鬼のふぐりって近頃売り出してヒットしている饅頭よ。女性が食べると子宝にめぐまれるの」

ラジオマン登場

*ラジオマンがやおら立ち上がる。スピーカーの部分を開けて顔を出す。自分でスイッチを入れる。

SE カシャ
と、突然ラジオからCMが流れ出すようにラジオマンがおしゃべり。


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ラジオマン 
(音楽)
「甘くておいしい鬼のふぐり。昔、桃太郎が鬼退治のあと鬼のふぐりを切りとり、小麦粉に混ぜて作ったといわれています。ご婦人方がお口にいれてほおばると子宝にめぐまれるという言い伝えがあります。サヌキノカイジン推薦、鬼のふぐり(サウンドロゴ)」

*するとまたも警部に電話。

警部  「なにっ、また死体だと。こんどはどこだ?銭形?よし、すぐに行く」



ラジオマン 「わ、ははは。この謎が解けるかな」(下げビラをしまいながら。

警部  「そうか、近頃おもしろいものが流行ってるな。ところで男が食べるとどうなるのかね。陽子くん」
陽子  「そんなの知らないわよ。もう警部、ちょっとはまじめに仕事をしたら?」
警部  「すまんすまん。では、名警部と言われている私が推理をはじめよう。堺俊子には子供がいなかった。そこで誰かが毒を入れて彼女にその鬼のふぐりをプレゼントしたわけだ。彼女は知らずに毒入り鬼のふぐりを食べた。だから犯人は彼女が子供を欲しがっていることを知っていたわけだ。どうだね。さすがにいい推理だ。カンがさえてきたぞ」
陽子  「彼女は誰かからうらみを買っていたのかしら。     それからこの暗号のメッセージは何かしら?」


警部  「カイニナレとは、海の貝になれってことかな」
音楽、ダンス。
刑事、野次馬、死体(半身起き上がって)が歌い出す。
♪わからない、困ったね。このままじゃ、死にきれない。



サヌキノカイジン

銭形殺人事件



1幕3場 銭形殺人事件



*山の上から眺めて
警部  「こりゃすごい。好い眺めだ。このお金は直径100メートルはあるかな。よくこんなものを昔の人は作ったものだ」
陽子  「江戸時代、丸亀のお殿様のために村びとが総出でしかもひと晩でこれを作ったそうよ」
警部  「うん、こりゃいい。銭形平次もびっくりだ」
陽子  「なにをばかなこと、いってるの。早く山を下りましょうよ」

1幕4場 銭形殺人現場



*大きな寛永帳宝がころがる砂浜。
*お金に埋まっている死体。

*見物客、死体を検証する警官達。
*ラジオマン、下手に座る。
*二人は山をおりて現場へ。



警部  「いやあ、これはむごい。でもうらやましい。お金に埋まって死んでいる。もったいない、もったいない」
陽子  「害者の名前は笹金金蔵よ」
警部  「なるほど金に縁のある人物だ。わしも金に埋もれてみたいな。なに、また手紙が出てきた。カネニナレ サヌキノカイジンヨリ。なんだこれは?この前の事件と同じじゃないか。この前は貝になれ。今度は金になれ。よくわからん」
     

*上手に座るラジオマンがやおら立ち上がりメッセージを書いた下げビラを出して見せる。

刑事、野次馬、死体(半身起き上がって)歌い出す。

♪わからない、どおしよう、困ったね、どうしよう。このままじゃ死にきれない。

陽子  「警部、害者はサヌキヌードルの専務よ。今度は社長のいとこにあたるんだって」


警部  「なんだって?害者同志は血のつながりがあるのか。社長は確かニ代目でこの前、跡を継いだばかりの米山タケシとかいってたな。とすると米山家の財産争いに関係があるのかな」

陽子  「死因はなにかしら?」
警部  「どうせまた、銭形平治のふぐりでも食ったんだろう」



*ラジオマン立ち上がる。事件の説明。
ラジオマン 「銭形でまたひとりの男性が殺されました。お金に埋まって死んだうらやましい事件です。犯人はカネニナレというメッセージを残しています。解剖の結旺毒入りソーセージが検出されました」
陽子  「さすが天才警部。銭形のふぐりではなかったけれど、胃袋からは毒の入ったソーセージがでてきたそうよ」
警部  「なんだ、それは。銭形セージだと?」




ラジオマン登場






photo|zenryu

ラジオマン 「突然ですがここでコマーシャル」
(音楽)
「みなさん、銭形セージってご存じですか。北の冷たい海で育ったゼニガタアザラシ。そのよく引き締まったお肉で作ったソーセージは精力絶倫。慢性疲労、精力減退に悩むお父さんにおすすめします。サヌキノカイジン推薦、ゼニガタセイジ」