ガラスの 屋根の家  |  matsuzaki

ガラスの
屋根の家

 

松崎 宏二

 
 
 
Glass Roof
House
 
 
 
 
 

ガラスの
屋根の家

松崎 宏二

Glass Roof
House

※純粋に技術上の問題として「窓のない家」というものを真面目に考えた。

 

01 窓のない家

 

Glass Roof House

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ガラスの屋根の家

 住宅建築は住み手の要望がそのまま形になっているというところがある。多かれ少なかれ、なんらかの好みが反映されているものである。建築家はその都度その望みに対して最適解を提供しようと努力をするのである。
 どのように設計が進んでいったかを振り返ってみると依頼主の夢をどのように実現させていけばよいかという技術的な試行錯誤だったように思われる。要求自体には迷いがなかったので、目指すところは明瞭であった。
 ただ、それがかなり特殊だったということが、幸か不幸か、この家の様相に大きな影響を及ぼしてしまう結果となった。第一に「窓はいらない」ということ。第二に「家中を見渡せるようにしたい」ということ。第三には「とても寒がりである」ということ。ちょっと変わっていると言えば変わっている。
 こういう極端な注文の持ち主には、世の中の住宅産業がまず満足な解決をしてくれる望みはない。建築家がなんとかしないといけないのである。

 

Glass Roof House

 住宅の階段勾配は踏面150、蹴上230というのが上限と定められている。これは角度にすると60度近い急な勾配である。依頼主の強い希望のひとつが階段をできるだけ緩やかにしてほしいということであった。
 そこで、勾配を1/2とすることにした。階高が9尺(約2727)なので、蹴上を5寸(約151.5)×18段とし、踏面を倍の1尺(約303)とすると、階段にちょうど5坪のスペースを使うことになる。
 これは個人住宅を設計する上でバカにならない空間である。そこで階段を中心に据えたプランという発想が生まれた。移動と視線と採光と通風と構造、すべての機能を階段に集約しなければならないと考えた。
 あとで詳しく述べるが、この階段の設計には相当の工夫が盛り込まれている。これ以外にはないだろう、というような緻密な計算の上に細部の寸法が決められている。

02 緩やかな階段

ガラスの屋根の家

 

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ガラスの屋根の家

 

03 見渡せる家

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Glass Roof House

 ブラインド(見えないところ)をつくらないようにしたいという依頼主の要望は、たとえば不審者が密かに潜んでいたりするかもしれないというような恐怖感を感じないようにしたい、ということが理由にはあるのだ。
 窓はいらない、という要望も同じ様な理由による。建築家の提案は外部と内部を一体化したような、外観も内部空間も開放的な外光溢れる透明感を追い求める傾向にある。それが建築家としては理想的な建築のあり方だと思うからだろう。
 外から丸見えであろうとも、住み手に対してカーテンをつけることを許さない建築家などもいて、そういう非現実性に違和感をおぼえる依頼主の話もよく耳にする。もちろん家は住み手が好きなように住めばいいのだが、そうもいかないようである。
 そういう「建築家像」というものがぬぐい去り難くあるのも事実だ。建築家の家は雨漏りするという噂もそのひとつである。実際、それは事実であったりもする。

 
 
 

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ガラスの屋根の家

04 畳の部屋≠和室

 日本人には畳敷きの部屋がやはり必要である。複数の来客用のベッドルームなどが取れない間取りでは、布団を敷くことができる和室がその代わりをする。しかし畳敷き=和の造作、という固定観念は場合によっては不要なものであるかもしれない。
 この依頼主の場合も、いわゆる「和風」というデザイン要素には抵抗がありながらも、床材のひとつとしては「畳の部屋が欲しい」という要望もあって、まったくの和室ではない畳の部屋をつくることとなった。そして出来たのがこの一部屋である。
 縁(へり)のない琉球畳を使うという選択肢も当然あったが、建築家設計の家の常套手段という陳腐なイメージもあり、擦り切れやすいという欠点や、そもそも粗末な材料の割に高価だというところも好きではない。
 いわゆる不祝儀敷きといわれる縁を通した敷き方にして(むろん根拠のない迷信だが)、そのほかには和室らしい造作を施していない。ただ機能的でいい質感の床材として畳を使っただけである。

 

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