老親が入院・手術! その時、子どもができること  |  4jouAkira

 

日本語タイトル入ります

老親が入院・
 手術! 
その時、子どもが出来ること

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老親が入院・手術!
その時、子どもができること

はじめに

 ある日突然、親が病気だと告げられた時、子どもはあわてる。
 その病気って何? 命にかかわるの? すぐ入院だ、手術だ、となったら、どうすればいいの?

 考えるべきこと、調べるべきことはたくさんある。にもかかわらず、体験するまでは知らないことだらけ、直面してうろたえることばかりだ。

 押さえるべき大事なポイントはある。そんな要諦を、体験者として、みなさんにお伝えしたい、というのがこのエッセーの眼目です。
 突然の事態にあわてないように、後で悔いが残ることにならないように、ぜひ、賢く活用して下さい。
                四条彬子

追記)
 なお、本書はあくまでも、個人が病気や病院と対応するにあたって、役立つ人は誰か、何を考えるべきか、といった心構えやノウハウを書いたものであって、個別の病気や治療法について解説した医学書ではありません。
 著者は医療の専門家ではないため、本書に書かれた医療情報については、最新ではなかったり、理解が間違っていたりする可能性があります。ご注意下さい。読者の皆様におかれましては、記述をそのまま鵜呑みにしたりしないよう(1章でも述べている通りですが)、それぞれの責任において、使えるノウハウだけ、活用していただけると幸いです。
           

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1章 突然、病気を告げられた時、最初に考えるべきこと
 1 「かかるのは、その病院でいいのか?」
 2 「石灰化」って何ですか?
   教訓1~4

2章 いざ入院・手術 患者と家族は待つばかり
 1 謝礼はいくら、いつ、誰に包む?
 2 主治医を捕まえろ!
 3 手術は今、どうなっているの?
   教訓5~9

3章 手術後こそ闘い~CCUの長い日々
 1 いつ「意識が戻る」の?
 2 いつまで人工呼吸?
 3 いつになったら一般病棟?
   教訓10、11

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目次

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その時、子どもができること

4章 手術後こそ闘い2~ぼけの恐怖
 1 「高次脳機能障害」の疑い?
 2 「術後せん妄?」診断のための検査を!
   教訓12~15

5章 転ばぬ先の転院準備
 1 早くリハビリ病院に転院させなきゃ
 2 転院手続きってどれだけ時間かかるの?
   教訓16、17

6章 転院までの長い道のり
 1 施設は見なくちゃ分からない
 2 転院?退院?いいえ、まずは外泊
   教訓18、19

7章 退院とは在宅リハビリの始まりである
 1 「退院してハッピーエンド」じゃない!
 2 そして、終わらない日常   教訓20

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その時、子どもができること

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1章  突然、病気を告げられた時、最初に考えるべきこと

1)「かかるのは、その病院でいいのか?」

 父のH(当時76)に腹部大動脈瘤があると分かったのは偶然からだった。
 2009年5月18日、突然、父は激しい腹痛を訴えた。「便秘気味なので、おなかをもんでいたら、ごろごろした。経験したことのない痛みだった」。仰向けだと痛く、うつぶせの方が痛みは和らいだという。だが、1時間ほどで収まったため、その時は病院に行かなかった。

 翌日か翌々日、かかりつけ医のNに腹痛の件を訴えた。N医師は、私たち家族とは血縁で、車で10分ほどのところで開業している。Nが腹に聴診器を当てたところ、「ざーざー」という雑音がする。これはおかしい、動脈瘤ではないか。超音波エコーで見てみると、動脈瘤らしきものを見つけたという。直径は4㍉程度。

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その時、子どもができること

 N医師の説明はこんな風だった。
 病名は腹部大動脈瘤。今の診断では瘤は4㌢以上。範囲が分からないけれど、もし大動脈から分岐する腎臓の動脈(腎動脈)に動脈瘤が絡んでいるような場合には、大変なことになる。
 動脈瘤は「サイエントキラー」といわれる難しい病気だ。ある時突然、瘤が爆発して発覚するまで、自覚症状もなく分からない。薬でどうこうなる病気ではない。しかも爆発したら死んでしまう。処置が間に合わず、出血多量になるからだ。
 今回は偶然見つかってラッキーだった。ただし、大動脈瘤破裂の危険性は常にある。手術をするとしたら、動脈瘤の部分を切って人工血管を入れる。人工血管は進歩しているが、比較的難しい手術には違いない。即手術するかどうかは瘤の部位や形状、大きさによる。動脈瘤の範囲が狭いと、自然に治る可能性もある。ふつうは5㍉以上が即手術が必要と判断される基準なので、父の場合は「要経過観察」といって、約半年ごとに大きくなるかどうか様子を見よう、

 「腹部大動脈瘤は5㍉以上が要手術と言われるけれど、念のため、大学病院できちんと3次元CTやMRIを取ってもらうことを勧める」。N医師はそう言って、父母の自宅から比較的近いS大学病院の、循環器(血管外科)の専門家M医師に紹介状を書いてくれた。M医師には以前、紹介状を書いて何人かの患者を送ったことがあるという。予約日は26日だった。

 母(当時68)は「手術して切っちゃったら治るから大丈夫」と私たち子どもに説明し、楽観的だった。それよりも、母の最大の心配は父の痴呆。N医師に腹痛を診てもらう直前、自宅に最も近いF大学病院で、脳の検査をしてもらっていた。MRIを撮るのは予約が必要で1カ月くらい待つと言われ、CTだけ撮る。幸い、脳梗塞も脳出血もないと確認できた。

 だが、私はN医師に「大事な話がある」と言われた。24日に会うと、父の病気は母の言うほど能天気な状態ではないことを教えられた。

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 大動脈瘤手術には開腹手術とステント手術がある。後者は、大動脈内にカテーテルを入れて遠隔操作で瘤を飛ばす手術で、開腹に比べて身体的負担が少なく、入院期間も短くて済む。後者の経験が多く、「神の手」と呼ばれる名医も、他の病院にいる。もちろん、M医師も血管外科の名医だ。ただ、予断は許されない。S病院とM医師の実績を調べた方がいい。ことにM医師の下で実際に手術をする医師は誰か、その実績はどうか、探したほうが良い。手術は、看護師や麻酔科医などチーム内の連携の善し悪しによっても成功率が変わってくるためだ。
 それらを、26日のM医師の最初の診察の前までに調べて考えておいた方がいい。もしS病院じゃダメだとなったら、火曜の予約はキャンセルしてもいいから。逆に、ひとまずM医師で行くことにして、その意見を聞いた後に、他でセカンドオピニオンをとることも考えられる。
 とにかく、いずれ手術はしなくちゃいけない。でも、手術には死の危険が伴う。そのことを、ちゃんと分かっておいたほうが良い。――

という判断になるかも知れない。けれど、置いておけば、動脈瘤はいつ爆発するか分からないので、常に死の危険はある。
 しかも、父の場合、手術自体もリスクがある。一つは糖尿病を持っていること。(血管がすでにぼろぼろになっていることが多く)治癒力が弱く、術後の治りが悪いため、難しい。もう一つは、後期高齢者(75歳以上)という年齢のこと。やはり体力が弱っている。手術がすんなり行くとは限らない。母が言っているような、「ちょっと切ってすぐ治る」、というものではない。
 だから、手術を受けるなら、なるべく優秀な医者のほうが良い。まずは3DのCT検査をして、動脈瘤の範囲がどのくらいか、どの程度悪いかを確認することになる。だがその前に、ここが一番大事なのだけれど、どの病院の誰先生で手術するのが良いのか、今回紹介状を書いたS大学病院のM医師で本当にいいのか、それをまず調べて、場所を決めたほうが良い。手術をする病院で、検査もしたほうが良い。

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で救急搬送が必要、という事態になったら、F病院に駆け込もうと思った。

 さらに口コミで、「大動脈瘤の手術ならここ」という定評のある総合病院も、実名を挙げていくつか教えてもらった。それらのhpを見て、手術数や成功率もチェックした。

 そんな中で、手術のリスクとして、動脈瘤自体はうまく散らせても、その血栓が頭に飛んで脳出血など別の病気を引き起こして亡くなったケースや、今まで血流がうまく届いていなかった足先に血栓が飛んで足が壊死したケースなども聞きかじった。さらに、手術も成功し血栓も飛ばなかったとしても、特に高齢者の場合、手術をきっかけに、痴呆や寝たきりになる可能性があることも分かった。それらの覚悟なくては手術に臨むべきではない、ということか。N医師が「ちゃんと覚悟をしておいたほうが良い」というのは、こうしたもろもろのリスクを知っておけ、ということだったのだ。

 私は驚いた。それほどの大病とも思っていなかったが、それよりも、まず病院に行く前に、その病院・その医者で良いかどうかを、患者側がチェックした方がいいなんて。

 あわてて、友人・知人、医者や医療関係者、手術を経験した親族がいる人など、手当たり次第に情報を集めた。自分でもインターネットで調べ、大動脈瘤が得意な病院のサイトや学会論文などで病気のことや手術法について学んだ。

 口コミ情報によると、動脈瘤は破裂したら終わりだから、万一の時に救急車で搬送して間に合う時間を考えて、自宅から車で30分圏内の総合病院を選ぶと良いという。しかも、救急車は、搬送時に、最寄りの病院のうち、患者のカルテがある病院を選ぶそうだ。もちろんS病院はその条件に当てはまる。計算外だったが、実家に最も近いのはF病院。CTを取ってもらったので、診療科は違うけれど、ここにカルテは残っている。手術までの間に万一、動脈瘤破裂

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 一方で、S病院の血管外科の評判も聞き込みをした。悪い噂は聞かなかった。M医師は専門医としてかなりの権威らしく、論文や著書が見つかった。実際の手術は部下の名前で行われているようだった。

 ステント手術では都内某病院に有名な外科医がいることも分かった。ただしテレビで取り上げられて以来人気で、緊急度にもよるが数カ月から半年待ち、といった情報も聞こえてきた。

 また、セカンドオピニオンについては、今どき、どこの病院でもそれ用のデータを開示してくれること、求められた側も意見を出してくれることが分かった。「動脈瘤の手術ならここ」と具体名を挙げて紹介された総合病院の中には、現在かかっている医者や病院からの紹介状がなくても受け付けてくれるところもあった。

 M医師の問診は2日後だった。とりあえず、問題がないことが分かったので、まずはS病院

のM医師に診察を受けることを決めた。検査の後、やはり手術だということになってから、手術の是非や手法に疑問があるようなら、セカンドオピニオンを取ればいいのだ、と結論づけた。その旨、N医師に報告すると、ちょっと安心したようだった。

 

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