Hallucinated Dreams  |  MisaruAsagao

 

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水道局のアンケートに答えたら貰えたサルビアの苗。
10日間ほど世話してやったら、真っ赤な花を付け出した。
窓際に置き、定期的に水をやり、しっかり光合成をさせている。ストレスを与えないよう、激しい音楽は絶対に聴かせない。そして、時たま語りかける。
おれは日々、こうしてこの花を愛で続けている。

20世紀も終わりに差し掛かかり、ノストラダムスの大予言に人々が踊らされていた頃のある日(自分も含めて)、おれは友人の部屋で濃縮サルビアを吸っていた。
今はどうなっているのか良くわからないが、当時ははっきりそれが"合法"であると詠われ販売されていたため、おれは友人と共に件の濃縮サルビアをパイプに詰め、火を点けて深く吸引、それからどんな"合法的"なトリップが到来するのか心待ちにしつつ、胡坐をかいて座っていた。

現実世界の中に夢が混入してきた。

おれの両腕の下からは、納豆のような糸が無数に垂れ始め、もたれ掛かっていた座椅子に絡みついていった。思考のスピードがとてつもなく速くなり、おれは頭の中に浮かんできた言葉たちの全てを友人に伝えたくなり、猛烈な勢いで喋り捲った挙句「うるさい!」と怒鳴られた。

その夢のようなハルシネーション感覚は、約5分程でどこかへ飛び去ってしまい、おれの思考回路もやがて平穏を取り戻していった。

色んな国におれは行って、色んな体験をしてきたが、あの5分間のトリップに叶うものはまだ経験したことがない。たまに愛でてやらないと風化してしまいそうなこんな記憶を、時折心の中で撫でながら、おれは今、自分の部屋でこのサルビアを育てている。

2010.6.23
00:39

サルビア

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「魅力・愛・美」を象徴するカード。タロットカード番号は”6”。カード内に描かれている1対の男女の姿は、アダムとイヴをモチーフにしたものだと言われている。
カードがこのように正位置の状態で出た場合、”合一、恋愛・性愛、趣味への没頭、試練の克服”等の意味がそこから滲み出てくる。
逆位置が出た場合の意味については、悲しくなってしまうので、ここには書かない。

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2010.6.23
00:57

 

 




 蛇にそそのかされ口にした
 イヴの齧った禁断の果実
 善悪の知識の木になった
 甘くて香ばしいその味は
 やがてアダムの舌をも虜にした

 エデンの園を追い出され
 男と女は服を着て
 命の木にも近寄れず
 男は930歳まで生きた
 女が死んだという話は聴かない

ザ・ラヴァーズ

パラノイア

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2010.6.23
16:38

 

 見失っちまった
 あいつの心を
 見失っちまった
 あの子の心を
 見失っちまった
 おれたちのソウルを
 盗まれちまった
 大切なものを

 どこまで行っても地平線
 草木の枯れた
 丑三つ時
 太陽なんて昇らない
 おれの心は永遠の闇

 キマっちまった
 おれの視界
 アシッド色に
 月が微笑む
 忘れっちまった
 おれの脳
 何が一番大切なのかを

生まれて初めてゴアでLSDを食べた時、自我がどこかへ吹っ飛んだのをおれは感じた。それまでの自分自身は綺麗さっぱり肉体からいなくなってしまい、後からやって来た赤子のような代理自我は、この世界に直面してただただ狼狽していた。紙を売ってくれた友達のアフリカ人は、「このネタの名前はビン・ラディンだ」と言った。

出会いと別れは盛者必衰の定め。

色即是空と空即是色のシェイクハンド。

その綻びの中で沸き起こる、微々たる衝動を胸に人は生きる。

海から生まれた生命たち。

星があり、月があり、太陽があり、闇と光は併在している。

生と死と永遠が、繰り返し、繰り返し、それぞれを追い駆け合っている。

誰かによってすでに綴られた未来映像が再生され、後の人々はそれに従うだけだ。

美も醜も酸いも甘いも、それらの全てがそこに内包されている。

2010.6.26
00:53

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アルコール

これまでの人生で、何ガロンのアルコールを摂取したのかわからない。今、この瞬間も飲んでいる。おれが生きていようが、死んでいようが、そんなことにはお構いなしに、日はまた昇り、沈んでいく。素晴らしい日々や夜々がある。常に傍らにいてほしい。

 赤く燃えた情熱の中に
 炎の揺らめきが悲しげだった
 鮮血とホラー映画と猟奇殺人鬼の微笑
 あの子の血は何色だろう?という問いかけ

 青く広がる海の中に
 踊るイルカと紺碧の空が映えている
 抗鬱剤が必要なほどの
 憂鬱も漂ってはいるが

 どこまでも続く緑の大草原に
 反吐よりも濃い黄色が飛び跳ねている
 便意を催したカンガルー
 彼はペヨーテを食べようとしている

 残酷なまでのカットアップが
 昨日と明日を入れ替えている
 未来はいずれ夢になるだろう
 死と、開かれた天国の扉のためには
 ノックは一切必要ない

チリワインは好きだ。赤の土臭さも格別だが、白の豊潤さも心地がいい。一本空けて眠りに就くと、次の日は快便。ポリフェノールが体内で大活躍しているのを感じる。揺らめく視界。沸きたつ衝動。酒文化よ永遠なれ。南米を訪れる夢は、未だ具現化できずにいるが、ワインとシエスタのためであれば、おれは人生をその衝動にベットしたっていいと、時折、本気で夢想する。

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酩耵の美学

2010.6.26
03:38

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悪魔を待つ盲(メクラ)

2010.6.27
10:16

クロスロードの真ん中で、
三味線を弾いている盲(メクラ)がいた。
通りがかる人間一人一人に、
盲(メクラ)は問う。
「あんたが、おれの待ってた悪魔なのか?もしそうだったら、おれの曲を聴いてくれ」と。
「ここで一曲、素敵な演奏をすれば、あんたは願い事を叶えてくれるんだろう?生まれてこの方まだ開いたことのないおれの両目に、どうかあんたの力で光を与えておくれよ。おれの両耳はきちんと機能してるから、人々が日夜笑い声を上げてるのは知ってるんだ。だけど、おれは一体みんなが何に対してあんな楽しそうに笑ってるのか知らない。きっと、この世界は心の底から笑う価値があるだけの、綺麗な色を纏ってるんだろ?」
毎回同じようにそう言うと、
盲(メクラ)は決まった曲を奏で出す。
自身の奏でる旋律に、
しわがれ声を乗せて歌い出す。

杏仁豆腐の日が暮れる
夕暮れを、背中に負って
フルーツポンチな月が微笑み、
蒼い狂気は降り続ける
雪国でしか活動できない
三千世界のアルピノ烏
緑色のマリファナを水パイプで吸う青虫
色彩と酩酊感で膨張した世界の中に
幻覚キノコを食べたアリスが迷い込んだ
悪魔よ、お前の纏うナルシシズムがそこまで巨大なら
どうかおれにも見せてくれ
黒い色の美しさを
白い色の醜さを

悲しみに駆られて人々が、盲(メクラ)の前を通り過ぎようとすると、盲(メクラ)は決まってこう告げる。
「次こそはどうか本物の悪魔を連れて来てくれ。おれは自分の流す血の色さえわからない。赤色という言葉は知ってるが、それがどんな色なのかわからないんだ」
三味線の調べが宙に舞う。
通り過ぎる者たちの聴覚を刺激する。
しかし、悪魔は決して現れない。
盲(メクラ)は死ぬまでそこで歌い続けるのだろう。

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詩―――紫色の涙の粒

0と1
0と1
0と1


そもそもそんなに単純なものなのかい?
この世界の構成原理って奴は?


足し算があって、引き算がある。

掛け算があって、割り算がある。

√があって、πがある。


0と1
0と1
0と1

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コンピュータは無機質だ。
感情が、そこにはない。

どれだけそれが稚拙なものだったとしも、
どれだけそれに吐き気を感じたとしても、
おれは人の心を失いたくはない。
決して。