今日の できごと  |  serizawa

 

今日の
できごと

2002年2月2日

今日の
できごと

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 その通りを歩いていると、コータローは無性に腹が立ってきた。「全く、胸くその悪い。反吐がでるぜ。」そこで、コータローは、腹いせに、『物乞い』をすることにした。「腐った世の中を象徴するあいつらに物乞いをしてやろう。戸惑いを与えてやれ。」
 コータローは、まず、先ほどの若者二人組に近づき、気持ちの悪い声で、「お金貸してください。お願いします。」と言いながら、足にすがりついた。若者二人組は、突然襲った気持の悪いできごとに、びっくりし、しがみついているコータローを振り払おうと必死になった。そして、コータローが足から離れると「なんだこいつ」と言いながら、顔をしかめることで、なんとか平静を取り繕いその場を離れた。今度は、巻髪の女の足の前で、「お金に困っているからお金を貸してほしい。」といいながら、すがりついた。女は不愉快極まりないといった様子で、ヒステリックに「気持ち悪い」と騒ぎ立てた。

 登校拒否児の鈴木コータローは、平日のよく晴れたのどかな午後、兄が大事にしているスクーターを借りて出かけることを思いついた。兄のコウタの部屋に行き、適当に机のあたりをさぐってスクーターのかぎを見つけた。
 さっそく、リュックを背負いスクーターにエンジンをかけ、街に出た。目的地は定めず走りつづけていると、にぎやかな通りにでた。
 コータローは、近くに駐車できるところを探し、駐車し、しばらく散策することにした。周囲は、「おしゃれだろ」雰囲気全開のカフェや洋服屋が並んでいた。そしてそこには、若者二人組が、通りゆく人のファッションを見て皮肉を言っていたり、カフェでお茶をしている、巻髪でワンピースの女が、スーツの男に甘ったるい声をだしていたり、女子高生が「だせー」とかいいながらゲラゲラ笑っている世界が広がっていた。
 

「それにしても、どいつもこいつもみんなくそ野郎ばかりだ。全くいやになっちまう。やれやれだぜ。」コータローは、おおげさに溜息をつきながら、家に入った。

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すると、男のほうが、「警察よぶぞ」と言いながら、コータローをふっとばした。今度は、コータローは、男のほうにしがみついた。カフェでお茶をしている人はみんなコータローのほうを見ている。恥をかかされた男は青筋をたてながら怒り、その場を離れた。
 コータローはにやりとした。満足したので、帰ることにし、スクーターに乗り込んだ。帰り道、コータローは、「鼻もちならない相手の鼻をあかしてやった。」という爽快感を感じていた。コータローは、しばらくご機嫌にスクーターを走らせていた。そんなコータローにも、時間が経つにつれ、気に食わなかったとはいえ、今日やったあまりに卑劣でプライドのない行為に対する自己嫌悪が生まれだした。「もうあんなことは二度とやめよう、当然だけど。」爽快感から虚しさへと感情を変化させながら、家へとスクーターを走らせた。次第にいつもの見慣れた風景が見えてきた。スクーターを停車し、家に入る前にふと一日を振り返った。感情としては、虚しさと満足感が同居しているようだった。

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  • 著者:serizawa
作 成 日:2009 年 11月 23日
発   行:serizawa
BSBN 1-01-00030546
ブックフォーマット:#321

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