食の記憶 オピニオンブック  |  eatrip

早川ユミ

ときどき旅人になり、アジアを歩きまわりいま、高知のやまのてっぺんで、ちいさな果樹園とちいさな畑、おととし、はじめて、田んぼを耕してみました。お米は、足踏み脱穀機で、収穫してみました。足踏みしながら、お米が、ぽこぽこ音をたてて、下におちます。楽しい作業の中でわたしは、お米は種だと知りました。お米をたべるのは、種をたべているのです。果樹園でとれる栗や、ももやみかんも、種そのものか、種のまわりをたべているのです。庭のにわとりや野性のいのししや、野性の鹿のお肉をたべると、いのちをたべたとわかりますが、お米や野菜もまた次の世代の種といういのちをたべているのです。種といういのちをたべながら、わたしのからだも、種になり、子を産み育ててみると、なんだか、地球のなかのいとなみは、種がつながっているような、種をたべて、種になる、樹になる、自然そのものが、地球そのものが、わたしのからだのような気がするのです。種を食べて、わたしもまた種になる。からだは大いなる循環、宇宙へとつながっているとわかったのです。

 

2010.2.17

布作家

 
 

6

1957年生まれ。アジアの手紡ぎ、手織布、草木染め、泥染、山岳少数民族の布。墨や柿渋で染めた布、麻布をちくちく、手縫いして、衣服をつくり、全国各地で個展をひらく。高知のやまのてっぺんでちいさな果樹園とちいさな畑を耕し、夫である陶芸家、小野哲平の薪の窯たきを手伝いながら、ときどきアジアを旅する。
『種まきノートーちくちく、畑、ごはんの
暮らし』アノニマスタジオ刊
http://une-une.com
http://www.anonima-studio.com/frameset.html

渡辺 満里奈

 

十数年前「食を通して文化をみる」というテーマでアフリカ大陸6カ国ぐらいをまわりました。南アフリカのスラム街で、羊の頭をドラム缶で8時間ぐらい煮込んで、その羊の顔の肉などを削いで岩塩をつけて食べた経験が記憶に残っています。
スラム街なので、お金がないから普通の体のお肉は買えないから、頭だけがそこにばーっと並んでいました。頭といっても長時間煮込むので、脂とかも落ちて、プルプルのコラーゲンだけが残って、目のまわりとか、ほほ肉とかがすごく美味しかったです。一緒に同行した人から、目玉が特に美味しいんだよ!と、すすめられるままに食べましたが、すごく美味しかったし、おもしろい食体験でした。世界を見渡すと、その人たちが食べなくてはならないものや、それしかないなど、状況はいろいろあります。この時も現地の方々が普通に食べているものをとても美味しく頂いた体験と同時に、社会の状況や、そこに暮らす人々の生活について、食べ物を通して理解するきっかけになり、今でも興味深い体験をさせてもらい、すごく印象に残っています。

5

2010.2.15

タレント

 
 

東京生まれ。清潔感あふれる明るいキャラクターでテレビ、ラジオ、CM、執筆などさまざまなジャンルで活躍。08年3月には、初めての妊娠・出産を綴った「これが私の十月十日 妊婦道」とストーリーを考えた絵本「ありがとうターブゥ」を2冊同時発売。09年4月に、続編として初めての育児で体験した様々な日常を紹介する「はじめてのこそだて 育自道」・絵本「ごめんねターブゥ」を2冊同時発売。

オフィシャルHP→
http://www.marina-watanabe.com/

同じ場所で、同じ物を食べてみたいと思うときがある。ハワイ島・ヒロ。ナチュラルフード屋さんのなかにあるカフェだ。いつも、レジの女の子は、鼻歌を歌っていた。メニューは、ベジバーガー、ダイズバーガー、トウフサラダ。フルーツのスムージーといったもの。ハワイに来て「いいな」と思うのは、ちいさな町でも1軒は、そんな店があることだ。食事を待つ間、窓から気持ちのいい風が流れていた。お客さん同士、挨拶を交わしている。静かな笑い声と穏やかな会話。お店の中はピースなもの。ふと見ると仏像があった。平和で正しいハワイのランチタイム。かなり時間が経って食事がテーブルに運ばれて来た。わたしが頼んだのは、トーフバーガー。ひと口。驚いた。とてもおいしかったから。野菜は新鮮だし、味もちゃんとコクがある。量もたっぷり。今まで食べた中で1番おいしいダイズバーガーだった。その時、幸せな空間にいることに気づいた。その場にいる人たちのエネルギー。窓からの光、風。畑の恵み。すべてが、幸せな空気に包まれていた。ときどき、その場面に戻りたいと思う。

2009.10.30

廣瀬 裕子

 
 
 

4

環境問題をテーマにした本に『できることからはじめています』 (文藝春秋)、『まいにちできること』(PHP)、マクロビオティックをテーマにした本に『自分のためにできること』
(幻冬舎)などがある。雑誌『天然生活』で「エコ、日々のくらしでできること」、アフタヌーンティーのHPで『うみ、まち、まいにち』連載中。ハワイの様子は『Alohaを見つけに』

オフィシャルHP→
http://y-hirose.com

作家。環境チーム「kokua factory」代表。

米沢 亜衣

2009.10.2

イタリアを旅して十数年が経つが、トスカーナの小さな村で下宿をすることになったある日のこと。家に通されるなり、大きな一軒家の一階部分を“全部自由に使ってね、日本人のあなたが何を食べるのかわからないし、好きなように料理しなさいね”と言われてしばし戸惑った。“でも、着いたばかりだし、今夜だけ一緒に食べる?”の言葉にふたつ返事をし、“ごはんよ”の声に二階に上がれど料理らしきものの気配は全くない。勝手に期待をふくらませてお腹を空かせてきた我が身を悔やみながら、クロスをかけ、カトラリーを並べているうちに、しばらくして食卓に、ぽん、と置かれたのはゆでただけのスパゲッティー。呆気にとられていると、湯気の上から緑色のオリーブオイルを目を見張るほどたっぷりとかけ、チーズを一面真っ白になるまですりおろしてくれた。一口食べて無心になった。それ以来、自分ひとりのために作るスパゲッティーはほとんどこればかりだ。一皿の料理に、本当に必要なものは何かということを、あのスパゲッティーは教えてくれたと思っている。

料理家

 
 
 

3

大学卒業後のイタリア生活を経て、料理家・有元葉子氏に師事。2004年、柴田書店より「わたしのイタリア料理」を上梓し、再びイタリアへ。現在は料理家として活動しながら年に数回のイタリアへの旅を続ける。『イタリア料理の本』に続き、「イタリア料理の本2」(アノマニスタジオ)が6月に出版された。

オフィシャルHP→
http://www.anonima-studio.com/frameset.html

下田 昌克

1967年生まれ。画文集に「PRIVATE WORLD」(山と渓谷社)、バリ島での絵と日記をまとめた「バナナの蜜」(講談社)、「ヒマラヤの下インドの上」(河出書房新社)など。新刊は絵本「かぜがおうちをみつけるまで」(スイッチ・パブリッシングより8/31発売)。

オフィシャルHP→
http://www.701-creative.com/shimoda/

 
 
 

画家

2

2009.8.14

数年前に、バリ人の友達から結婚するから、手伝いに来てと手紙が来て、手伝いにいったときのこと。1週間前から村中のみんなで結婚式の準備をするの。そしたら、豚が3頭来て、それを丸焼きにしたり、ミンチにしたり、サテーとかつくったりするんだけど、豚を丸ごとさばいたりしてて、普通にすごく働かされてたの(笑)。ソーセージつくるから、腸洗ってきてとか言われて、えーっとか言いながらも洗ってたんだけど、むちゃくちゃ水圧がゆるかったりしてね~(笑)。その時、生き物を目の前でさばいて、それを料理していくのを目の当たりにして、ある意味、すごく「食べ物」らしいなって思った。東京にいるとお肉でも一頭まるごとさばいたりとか、あまり目にしないけど、当たり前のことだし、とても印象的だった。あと、世界を旅していてすごく感じるのが、その土地で、昔からずっと食べているものってすごく美味しい。やはりそこに残っている意味があるんだな~、と思うし、みんなと一緒に食べると、その土地のことを感覚的に少しわかった気がするんだよね。

2009.7.9

 

女優

1

多彩な役をこなす演技力と存在感で、映画・舞台・ドラマなど幅広く活躍中。
近年の主な出演作品に、舞台『欲望という名の電車』『かもめ』『パンク侍斬られて候』や、TVドラマ『ラブシャッフル』
WOWOWドラマW『人間動物園』など。秋には、宮本輝原作・ジョンケアード脚本/演出の舞台『錦繍』に出演予定。

オフィシャルHP→
http://www.flyingbox.co.jp

ネパールへトレッキングで訪れる時に立ち寄る山小屋のキッチンは、すごく素敵。私は、普段から人の家のキッチンが好きですが、ネパールのキッチンは、土間みたいにとっても広くて、そこにストーブみたいなコンロがあるんです。そこで焚き木で火を起こし、上に丸い穴があいていて火がでてくるので、フライパンやお鍋をおいて使う仕組みになっているんです。その下には扉があってオーブンにもなるし、その中に食品を入れておけば保温もできる。とっても原始的なつくりだけど、すごく機能的で、お料理だけでなく、寒さ対策でそこで暖もとれるから、ひとが集って会話が生まれるキッチンなんです。わたしは旅行者だけど、お料理が好きだから、山小屋ではいつもキッチンにいて、ゲストの人たちの為に作る料理とかをじっと見ているんです。なんか言葉は分からないけど、料理が好きだと、食べてみなよ、とか、言ってくれたりするんです。その空間や、人との交流があって、あたたかい空気が流れてる、そんなネパールの山小屋のキッチンが印象深い記憶です。

小島 聖

 
 
食の記憶 オピニオンブック
  • 著者:eatrip
作 成 日:2009 年 06月 24日
発   行:eatrip
BSBN 1-01-00025037
ブックフォーマット:#515