◇・題詠・◇ 2009→2011  |  flatkotori

02

青野ことり

 

◇・題詠・◇

2009→2011

005:調
君らしいリズムを刻み一歩ずつ調べにのって春を拓けば

006:水玉
紺の地に白い水玉 雨あがり 裾を濡らして空を蹴散らす

007:ランチ
休日のブランチに似ていまここにいることだけを愉しんでいる

008:飾
ひとつずつ似合わぬものを除いたら飾るものなどなにもなかった

【題詠blog2009】投稿歌

001:笑
結んでもむすんでもまたほころびてしまうこの頬 笑みは光に

002:一日
それからのことは憶えていないのに一日ひとひと裡に染み入る

003:助
手助けができるとしたらお気楽に笑っていられるここにすること

004:ひだまり
ひと言もいわなくたってひだまりのように光を湛えて君は

009:ふわふわ
あのころはふわふわしている足元を気にすることも厭わしかった

010:街
街路樹は葉を落としてもなお生きて命の水をめぐらせて佇つ

011:嫉妬
ねっとりと嫉妬していた まといつくコールタールの海の深みで

012:達
達成感という名の光 包まれて笑う日はくる きっと君にも

013:カタカナ
ひらかなで話しかけるとカタカナで答えをくれる 若さ弾んで

014:煮
ことこととまた煮るために白いんげん金時大豆ひよこ豆買う

015:型
5ミリほどの厚さになれば丁寧にハートの型で抜いて並べる

016:Uターン
もう少し もう一本と道を越えUターンするときを逃した

017:解
永遠に謎は解けない ノックしてどんな理由(わけ)かと訊ねなければ

018:格差
重心を低くおとしてぶつかった 体格差などものともせずに

024:天ぷら
絵に描いたような晴天ぷらすちっくめいた景色だ 雲ひとつない

025:氷
もえすぎた胸の炎を冷ますには氷あずきのやさしい甘さ

026:コンビニ
異次元に迷い込まないように在る 深夜のコンビニ光にまみれ

027:既
なんとなくふり向いたのはぞわぞわと首筋あたりを襲う既視感

028:透明
スクランブル交差点には水玉のような半透明の傘傘

019:ノート
さようなら そしてひとりの街角にラストノートのムスクが香る

020:貧
貧しさを言い訳にせずまっすぐに生きていけるよ 小石を蹴って

021:くちばし
橙のくちばし水に透けている 雨が上がって空も映して

022:職
白シャツの袖をまくってアイロンを遣う職人 額には汗

023:シャツ
同じ色同じ形のシャツばかり いつも変わらぬ者であるため

029:くしゃくしゃ
梅雨前に仕舞ったシャツはくしゃくしゃで着られないまま暗がりに在る

030:牛
あじさいの大きな葉っぱしならせて蝸牛ゆくのたりのたりと

031:てっぺん
ここからは未だみえないてっぺんに心もからだも染まりたがって

032:世界
いまいくつ開いたのだろう 気がつけばマトリョーシカのような世界だ

033:冠
夕焼けが薄れるのにも気づかずにシロツメクサで編んだ冠

034:序
だって小市民ですもの 公衆の秩序を乱すなんて怖くて

035:ロンドン
垂れ込める霧の重さを両肩に ロンドン 道は眠りにつづく

036:意図
繕った表情の下あきらかに透けて見えるよ意図せぬ真実(まこと)

037:藤
匂やかにたおやかに風ふくらまし五月にゆれる藤の花房

038:→
点と点、最短距離でつなぐ→(や)のようだ皐月の空翔ぶツバメ

039:広
広々とした風景だ 君のみる夢の景色の端っこに佇つ

040:すみれ
ぼんやりと空はすみれに みおろせば瞬くほどに営みの窓

041:越
寝過ごして慌てふためく心地して春春夏を追い越さないで

042:クリック
クリックするたびに緊張したことを忘れずにいる 戒めとして

043:係
涼しげに茂らせてみよ夏までに 君が今年はゴーヤの係

044:わさび
千切りの野菜の小山 ツンとくるわさびドレッシングでもりもり崩す

045:幕
いつだってそんなものだよ幕切れはあっけなくって言葉もでない

046:常識
真実と常識はイコールでつなげない 鶯色のうぐいす探す

047:警
はや足で渡りきれたら息をつく 背中で震える警笛を聞く

048:逢
逢えるとは思わなかった 十年を越えて数えることをやめたの

049:ソムリエ
顔色も変えずに注ぐソムリエの嘘に気づかぬふりで呑みこむ

050:災
眼裏にしあわせひとつ灯したらきょう一日の災いとける

051:言い訳
こんな夜はなにをいっても言い訳にしかきこえない 声が遠いよ

052:縄
すんなりと抜けられなくて大縄は回りつづけているしかなくて

053:妊娠
妊娠を告げられてもうマタニティドレス着たくてそろそろ歩く

054:首
どこまでも広い原っぱそよぐ風 シロツメクサで編む首飾り

055:式
あのひとの結婚式のために撮るビデオレターに笑顔ではしゃぐ

056:アドレス
無軌道な人の名前がやさしくてアドレス帳は捨ててしまった

057:縁
初めての浴衣の帯が気になって それだけだった縁日の夜

058:魔法
一瞬で世界の色を変えたきみ 魔法の言葉おぼえていますか

059:済
「一度だけ救済措置として許す」 一方的に許されたって

060:引退
花道は哀しい景色 引退のそののちのこと問われもしない

061:ピンク
ケータイがなかったころの待ち合わせ サーモンピンクを目印にして

062:坂
ベランダは音だけ花火 たまらずに坂の途中へサンダルでいく

063:ゆらり
ハンカチがすっかり湿り道の先ゆらりゆらめく夏の昼まえ

064:宮
石段を上り詰めたら蝉時雨 お宮の杜の時は止まって

065:選挙
帰国してひと月あまり 選挙人名簿にはまだ私はいない

066:角
しっかりと角が立つまで泡立てたクリーム 真夏の空のただ中

067:フルート
唇をふれた刹那の冷たさに思わず置いたフルート 君の

068:秋刀魚
庭先にだした七輪 夕暮れに秋刀魚の煙青く漂う

069:隅
ぼんやりと闇が澱んだ部屋の隅 きつい言葉は凝ったままで 

070:CD
いらないと言えず視線も合わせずに君セレクションCD ここに

071:痩
あと少し痩せていたってあらすじはたぶん大して違わなかった

072:瀬戸
瀬戸物のちいさなお皿 ふっくらと煮含められたお豆をのせる

073:マスク
箱入りの不織布マスク(少しだけ迷ったけれど)二箱買った

074:肩
いまごろはどこを旅しているのだろう 柔らかかったわたくしの肩

075:おまけ
もうみんな忘れたろうかキラキラのおまけ欲しさに捨てられたチョコ

076:住
夏が来るまえに移ったかりそめの住まいの庭にも秋の虫鳴く

077:屑
「屑籠」とそこに名づけた くしゃくしゃと丸めた想い捨て去るために

078:アンコール
アンコールに応えたあとも聴衆の拍手はやまずゆったりうねる