The Letter  |  recommuni

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 インスト・バンドなのですが、それにも関わらず、このバンドの曲に「ものがたり」を感じます。その、ものがたるギターと一緒に歌ってみたくて、参加をお願いしました。「ポケット」の内側へ向かうグルーヴとでもいうあの感じは、添田さんのアレンジとギターがなくては生まれなかったと思います。今回の録音は大阪で行い、参加してくださった方々はほとんど関西〜中国地方在住なのですが、添田さんだけは東京からベースとエレキとアコギという大量の荷物を担いで来てくれました。「しっぽののこり」のコーラス録音時は添田さんだけ東京にいたので、後日ひとりで録ったものを送って頂き、それを上から被せて収録しました。

 ベースを弾いてくださっているGYUUNE CASSETTEの須原敬三さんは、1stアルバム『otete』を録音してから、それを持ったままうろうろしていた私を拾い上げて大切にリリースしてくださった恩人のような方です。姫路のEASEというカフェで出会いました。須原さんには本当に御世話になっているのですが・・・あり過ぎてここには書ききれません。私のうたの、そして私の最大の理解者です。須原さんのベースはうたをすくい上げるように、包み込むように、相槌をうつように、とても優しくしなやかに響きます。人が、そのまま音になっています。黒猫音頭は須原さんと1発録音しました。とても楽しかったので、それがきちんと出ているといいなあと思います。「soda ball」は、なんと私がめちゃくちゃに弾き語りをした後か

 
『とうめいなじかん』

             

ら、丁寧に音を重ねてくださいました。

 エレクトリック・ピアノで参加して下さっている金子尚代さんを初めて見たのは・・・実は、ゆーきゃんさんのライブでした。ゆーきゃんさんのうたを初めてライブで聴いた日、その横で鍵盤を弾いてらっしゃったのです。そのとき、「なんてきれいな人だろう」と見とれていました。まるで優しいたましいそのものが鍵盤をはじいているかのようでした。その後キツネの嫁入りというバンドを始められて、なんと前作『otete』のレコ発京都編を彼らが企画してくださった関係で、お友達になることができたのです。「しっぽののこり」という曲で、楽しくて温かい音を紡いで下さっています。

ソプラノ・サックスで参加してくださっているみやけをしんいちさんは、バンジョーの方と2人でmelagukan(ムラグカン)というデュオ・バンドをされています。大阪にあったBRIDGEというライブ・スペースで出会いました。そこは、実験的な音楽、そして音楽だけに限らずさまざまな芸術や人が集まる素晴らしい場所でした。ほんの10回ほどしか行ったことがないにもかかわらず、私が最も深い影響を受けた場所(社会とも呼びたい)です。残念ながら今はもうありませんが、とても素敵なライブが繰り広げられ

『とうめいなじかん』

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ていて、それらを観るために岡山からバスで遊びに行っていました。出演したことは3度しかないのですが、そのうちの1つのライブを企画してくださったのがみやけさんです。そのライブのとき聴いたみやけさんの演奏が本当に素晴らしくて、いつか共演してもらえたら! と思っていました。そして「あさひ」という曲のことを考えていたとき、みやけさんのサックスが浮かんだのです。まさしく朝の光のような、素晴らしい音を演奏してくださっています。

 そしておもちゃのラッパを驚異的なほど上手に手懐けて吹き荒らしているのは、貝つぶさん。香川県直島にある「まるや」というカフェでのライブの出演者を探していらして、私を見つけてくださいました。それ以来たくさん一緒におもしろいことをさせて頂いてます。ライブもたくさん一緒にしてくださいました。貝つぶさんの手にかかると、おもちゃでも楽器でも、まるで生き物みたいにユニークな音を出すんです。

 「しっぽののこり」で「さんはい!」と元気な掛け声を掛けてくださっている高野陽子さんはアルケミーのスタッフの方で、アルバム制作に当たってたくさん御世話になりました。普段は中山双葉ちゃんの隣でベースを弾いたりも

             

されています。張り詰めがちなレコーディング現場が、高野さんの笑顔でとてもなごんでいました。「しっぽののこり」を録るときもスタジオに居てくださったので、突然お願いしてコーラスと掛け声で参加していただきました。

 今まではひとりで、1対1のコミュニケーション手段としてのうたを歌ってきました。でももっと自由に、うたという鳥を遠くまで飛ばせてあげたいと思ったのです。参加してくださったみなさんの、歌に対する直感的かつ深い解釈が、羽根を強くしたり、休む森を作ってくれたり、空を無限に広げてくれたり・・・たくさん力を与えてくれました。

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 同じ曲を歌い続けるうちに、それが自分を越えた場所に行ってしまうという感覚にときどき襲われます。『とうめいなじかん』に収録されている「雪」という曲は、ずっと昔からのレパートリーですよね。

   <もし僕が銃ならきっと空を撃つだろう>

というフレーズをはじめて耳にしたときの感動は、いまでも覚えています。あの曲が前作『otete』に収録されなかった理由を(もし差し支えなければ)教えてください。

 そして、長い間温めるあいだに、あの曲がもつ色合いや意味がどんなふうに変わっていったのか、もしくは変わらずに残り続ける力があるとするならそれは何なのか、教えてください。

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「雪」

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 前作『otete』をつくったのは、親友が亡くなったことと、大切な人がそばにいなくなったことがきっかけでした。「もう決して誰も失いたくない、いま私の側に居る大切な人たちにどうしても今すぐ言わなくちゃならないことがある」という強い思いで、千切れそうな自分を束ねて必死でうたを歌いました。だから、抱きしめるためのうたしか、『otete』には入っていません。そのころ「雪」は存在していましたが、ライブでも決して歌おうとはしませんでしたし、CDに入れようとも思いませんでした。あの曲がCDとして存在して、しかもひとりぼっちの誰かの部屋で流れてもいい歌だとはとても思えなかったのです。

 「雪」には特別な思いがあります。あのうたを誰かに手渡す事は、とても怖いことでした。

 今回のアルバムにその雪を入れた理由は・・・もしかしたらゆーきゃんさんのおっしゃる「それが自分を越えた場所に行って」しまったからかもしれません。色々あるのですが・・・今はまだヒミツにさせてください。

 
 
 
 
 
 
 
  
 最後にちひろさんは、「糸電話に話しかけるようにして、うたをうたう」とおっしゃっていましたね。糸電話の先には、誰かがいるのでしょうか。その誰かについて想像したことや、実感したことはありますか。「うた」は歌われたあと、どこへ行くのでしょう?

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世界に還るんじゃないかな

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 糸電話に話しかけるようにうたう、というのは上に書いた前作『otete』の頃に、特に言えるものなのかもしれません。『otete』は手紙としての歌・・・1対1で聴いてくれる人に向き合って「生きていてください」というつもりで歌っていました。今でもそれは変わりませんが、ずっと限定的なメッセージがありました。『とうめいなじかん』では、みんなが持っている糸電話の糸を借りてきて、束ねて、ハンモックを作った感じです。聴いてくださる方がそのハンモックに乗っかって、自由にうたを紡ぎ直してくれるといいなあと思います。『とうめいなじかん』では、とうめいな時間の中で揺れる私たちという光を歌ったつもりなので、聴いて下さったかたが、その方のまぶたに、その方の光で物語を投影してくれると嬉しいです。

歌は歌われたあと、「世界に還るんじゃないかな」と思います。還ると言うのは「循環する」という意味です。
水が蒸発して、雨となって地上に戻って来るように、命が土に還り、新しい何かが生まれるように、地球の上で全てのものは姿を変えつつ存在し続けているから、うたという一種のエネルギーも、その循環する輪のなかに還って、別のエネルギーになっているのではないかと思います。

 最近はいつも、道のようでありたいと思ってうたをう

たっています。どこかからやって来る、うたのもとである何かが私の中心を通って外へ出るとき、出来るだけ身体の中にある抵抗を少なくして、「それがやってきた姿のまま、壊さないよう空に放つ」ことができたらと思っています。「とうめいロボ」とはその澄んだ道のようなシステムのことです。











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とうめいロボ 
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ゆーきゃん http://recommuni.jp/them/index.php/ARTIST/6659 

 ありがとうございました。
 本当は、ちゃんと向き合ってお話したかったのですが...でも、きっと差し向かいでこんな話題を振るわけにもいかないだろうなとも思います(笑)
 またライブ行きますね。あ、4月の山形はとても楽しみにしています。どうぞよろしくおねがいします。
                     ゆーきゃん

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世界に還るんじゃないかな

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手紙は、海を越えることになった。 米オリンピアの名門レーベル、Kからアルバムをリリースした、Mirahへの便り。

 ところで、僕は手紙の中でいろいろと聞くけれど、いろいろと迷った末、たった4つ、ゆーきゃんにとって、いま「わかりたい」ことだけを、たずねてみることにしたのだ。違った言語を使い、違った文化で暮らす、異性のシンガー・ソングライター。僕にとって、理解するための前提が普段よりもあいまいな存在。

 そんな彼女が、一枚のアルバムに込めた「音楽」について、教えてくれた。

ゆーきゃんからミラーへのてがみ

ゆーきゃんからミラーへのてがみ

 
 
Mirah

             

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Mirah Yom Tov Zeitlyn

 キャルビン・ジョンソンが主催する名門レーベル“K”のトップ・セリング・アーティストであり、Chara、モデスト・マウス、+/-、二階堂和美ら多くのアーティストから絶賛を浴びる、近年のUS北西部シーンが産んだ最高の女性アーティスト。

 コケティッシュ&キュートな歌声と、ジャズ&フォークの香り漂う絶品のソング・ライティングが魅力。