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                        ゆーきゃんからのてがみ

ゆーきゃんからとうめいロボへのてがみ

はじめに書いておく。
今回のてがみはとても長いが、あえてほぼ全文を掲載したいと思う。

 僕が、とうめいロボに話してくれとせがんだのだし、なによりも彼女のことばは、ひと綴りのビーズのように連なっていて、ひとつでも外そうとすればすぐにばらばらになってしまいそうだ。

 だから、お願いがある。もしこのてがみを読むのに疲れたら、途中で放りだしても構わない。でも、そのあいだ『とうめいなじかん』を聴いてほしい。とうめいロボがいったことばを時折思い出しながら...

ゆーきゃんからとうめいロボへのてがみ

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2nd album とうめいなじかん 

http://recommuni.jp/opus/package.php/8450

 本名、近藤千尋。

「ギターを弾きながら、糸電話に話しかけるようにうたを歌う」スタイルで2004年頃から岡山で活動開始。2006年にソロ・ユニットを「とうめいロボ」と命名し、全国のライブ・ハウスで活動中。

 その繊細で透き通るようなボーカル、リスナーの心の奥に突き刺さる歌詞、センチメンタルなアコースティック・サウンドは当初からJOJO広重、山本精一、須原敬三などから高い支持を受けた。現在は東京を中心に全国のライブ・ハウスで活動を行っている注目の女性シンガー。

 2007年にギューンからインディーズ・デビュー、発表されたアルバム『otete』はJOJO広重をして「彼女は21世紀の森田童子だ」と最高級の評価を受けている。

             

 
 
とうめいロボ

             

2009-03-10 

 こんにちは。アルバム発売おめでとうございます。

 『とうめいなじかん』、いつも聴かせていただいています。とうめいロボのうたが流れると、ほんとうに時間が透き通っていく気がします。さて今日は、いくつかちひろさんにお話して欲しいことがあってメールしました。

 つね日頃「うた」それ自身には「呼吸」があると思っているのですが、アルバムの中でそれはゆっくりと、豊かに、自信を持って繰り返されていて、ふと気付くと、その呼吸のなかに引き込まれてしまっています。自我の強いうた、僕らをはっとさせたり、抱きすくめようとしたりするうたはたくさんあるけれど、ちひろさんのうたは、それらとは少し違うようです。違いを考えたのですが、そのひとつには、「ことば」が歌い出すままに任せているように思えます。声は、ことばがよぶメロディを空に放つだけで、けっして声高に自分を主張しません。そのかわり、いったんことばが導き出したメロディの上では、黒猫の真似さえも軽々としてみせます。

 ひとりのファンとして、また同じようにうたをうたう人間として質問したいと思います。どうぞよろしくおねがいします。       
                    ゆーきゃん            

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 こんにちは、お手紙ありがとうございます。

 そして『とうめいなじかん』を聴いて下さって、ありがとうございます。

 初めてゆーきゃんさんの歌を聴いたのは、CD『ひかり』で、場所は京都のNANOというライブ・ハウスでした。ライブ・ハウスの店主土龍さんがそれをかけて下さったのです。そのとき、私は救われた気がしたのでした。自分がうたうときの呼吸の感覚に極めて近い感じの(と、不躾にも勝手に感じたのです)うたをうたう人を、初めて見つけたと思ったのです。今回、ゆーきゃんさんとうたのことについてお手紙を交換できることがとても嬉しいです。

 頂いたお手紙は私のうたの、そして私という存在の核を衝く内容でした。いつも大切にしていること、しかし普段なかなか話す機会のないことを引き出してくださる質問ばかりです。とても驚きました。すてきなお手紙をありがとうございます。

 それでは、ひとつひとつじゅんばんにお返事させていただきます。
                 とうめいロボ

2009-03-12 

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口からぽろりと...

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 「ことば」が私のところにやってくる前に、まず「景色」のようなものがやってきます。それは風景だけの時もあれば、物語が垣間見えたりもします。それを身体のなかに吸い込んで、口からポロリと出してみます。できるだけ壊さないように。すると自然に言葉は抑揚を持ちます。声が伸びたり跳ねたりします。それを「うた」と名付けている、とでも言ったらぴったりくるのでしょうか。

 詩をメモしたり、うたを作るために考えるという作業はほとんどしません。1つの曲に1つの景色があって、その景色をなぞりながら何度も口からポロリとうたを出してみて、それを繰り返しているうちに定着した或る言葉が、たまたまいま残っているという感じです。なので、レコーディングの時点でも歌詞は決まっていなくて、歌うたびに少しずつ歌詞が変わってしまいます。そのため、歌詞カードは出来上がったCDを聴きながら、歌詞を聞き取ってメモして出来上がりました。

 
 
 
 

 
 
 
 
 なぜ「ことば」が「うた」に変わらなくてはいけないのか? そこには一つの魔法があるように思います。ちひろさんは、「ことば」が「うた」に変わる瞬間のことを覚えていますか? 最初にこころに浮かんだ「ことば」がひとつの曲になるまで、どういう道筋たどりますか?

「景色」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 うたを歌うとき、こころに見る景色は、人によって違うと思っています。ちひろさんの場合は、ギターを抱えて、ことばにメロディを乗せて体の外に放り出すとき、あなたは何を見ているのでしょうか。覚えていたら(というのは、僕はよく忘れるので)、すこし話して欲しいです。

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 私にとっての「うたうこと」はスケッチのようなものなのかもしれません。声という筆で「景色」を、世界をなぞるのです。もちろん「詩」や「曲」は大切な骨組みですが、「声」という筆も私にとっては掛け替えのないものです。

 CDには録音した日のスケッチが残っています。一度定着した曲や詩は、その後大きくは変化しません。しかし歌うたび、声の出し方は変わります。歌うときには、その瞬間の陰影を描き留めたいと思うのです。同じ歌でも、毎回少しずつ「景色」が変わります。1つの湖が朝と夜では全く違った表情を見せるように、私が生きて変化し続ける限り、同じうたは2度と歌えません。歌うたび、「景色」に触れたくて手を伸ばすように、焦がれるように声を出します。

 『とうめいなじかん』は、JOJO広重さんの「CDを作りませんか? 」というお誘いがあって、制作を開始しました。以前から、2ndアルバムを大好きなミュージシャンと一緒に作りたいと思ってはいたのですが、このお誘いで突然その想いが現実味を帯びてきたのです。

 広重さんとは岡山のPEPPER LANDというライブ・ハウスで出会いました。対バンだったのです。その時に初めてお会いして、その後また一度PEPPER LANDでライブを見て下さいました。後日、広重さんからAlchemy RecordsからCDを出しませんか、というメールを頂きました。でも前作『otete』をちょうど録り終わった頃で、GYUUNE CASSETTEからリリースすることが決まっていました。その1年後にも、CDを出しませんかとお話を頂いたのですが、私ののんびりし過ぎな性格などが影響し、なかなか実現しなかったのです。

 或る時、広重さんの経営されているアルケミー・ミュージック・ストアの実店舗が閉店することになりました。(ウェブ・ショップは現在も営業中です。)その店舗営業最後の日に、広重さんと須原敬三さん(GYUUNE CASSETTE)と私の3人でライブをしました(とうめい階段という名前でやりました)。その日のライブはとにかく凄

 
 
 
 
 
 『otete』は冬の寒さのような、痛みと細い希望で綴られたアルバムでした。『とうめいなじかん』はうって変わって、春の予感にも似た淡い喜びが全編で流れているように思います。

 その変化はちひろさん自身にもよるでしょうが、それとおなじくらい、ゲスト参加しているミュージシャンたちが深い共感と理解をもって奏でている音が大きいと感じました。これらの出会いは、どんなふうにしてなされたのでしょう? また、曲ごとにいろいろなゲストを迎えて行ったレコーディングは、いかがでしたか?

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『とうめいなじかん』

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いライブで、気持ちや意識が大きく変化しました。そのあとの広重さんとのメールのやり取りがきっかけで、今回の『とうめいなじかん』制作は始まったのです。

 広重さんはとうめい階段でも一緒に演奏した「雪」でギターを弾いてくださっています。そのギターを聴いていると、冷たくて白い、残酷で優しい雪が頭の中に積もって行くような気分になります。当初は予定になかった「馬車」にも後からノイズを被せてくださいました。

 さて、CD制作が決まって、まず真っ先に電話をしたのは、以前から一緒に曲を作ったりライブをしていた枡本航太くん。アルバムのハイライトである「雪」や「羊」は、一緒に作った曲です。2004年に笠岡の萌というライブ喫茶の飛び入りライブで出会いました。彼のうたを聴いて打ちのめされて、私のうたも聴いて欲しくてある日家に押しかけました。そして聴いてもらったのがCDにも入っている「soda ball」です。それを聴いて「バンドやろうよ!」と言ってくれて、それから一緒に曲を作り始めました。彼とはお互いが持っている景色が重なるのです。そして私たちにしか作れない響きが生まれます。稀有な旅仲間です。今回のCDは「雪(kota Masumoto version)」と「羊」のアレンジ、そしてギター、その他しっぽののこりのコーラ

『とうめいなじかん』

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スなどで活躍してくれています。繊細なギターはもちろん、アレンジの素晴らしさといったらないです。

 それからチェロで参加して下さっている黒田誠二郎さん。彼は、京都で細胞文学というチェロとギターとうたのバンドをされています(現在は休止中)。私は細胞文学の大ファンでした。そんなわけで、思い切って共演をお願いしてみました。電話するまでに、携帯を持ってから発信するまでに1時間近くかかりました。しかしながら緊張をよそに、黒田さんは、ほわっと「ええで」と言ってくださったのです。音を合わせてみると、黒田さんのチェロが私の声を引き出してくれて、世界がぐんぐん広がり、本当に素晴らしい感じでした。そして当初の予定を遥かに超えるかたちで、全面的にアルバムに参加して頂くこととなりました。(なんと曲順まで決めてもらいました。)「馬車」は黒田さんと2人で録音ブースに入ってほとんど練習も打ち合わせもなく録り上げました。あれを聴けば、全てわかっていただけるのではないかと思います。

 「ポケット」という曲は添田雄介さんがアレンジから全パート(ギター、ベース、ドラム)の演奏まで担当して下さいました。大好きなMUDDY WORLDというバンドのギタリストで、一緒にライブ・ツアーをしたこともあります。