◇・題詠・◇ 2004→2008  |  flatkotori

 

青野ことり

01

◇・題詠・◇

'04 → '08

【題詠マラソン2004】投稿歌

005:名前
名前などただの記号と知りつつもその三文字が我ときめかす

006:土
柔らかき土おし上ぐる漲りを春といふのか命の芽吹きと

007:数学
美しき法則(きまり)ひもとく数学の編まれたる詩のひとひらに似て

008:姫
シンデレラ姫のガラスの靴だけは魔法解けずに残る運命

001:空
たっぷりのみるく溶かした空いろに紛れるほどに染まりたい午後

002:安心
そこに君いることのみで安心を纏ったような錯覚に酔う

003:運
心臓が胸を破って飛び出して、運動会の花火鳴る朝

004:ぬくもり
なにげないひと言こそがこの胸にぽっと灯ってぬくもりになり



名前などただの記号と知りつつもその三文字が我ときめか

1

014:オルゴール
ばらばらに分解したのはオルゴールもっとたわわに響かせたくて

015:蜜柑
てのひらにぬくもりじんと伝わってゆうひのいろの蜜柑 泣きたい

016:乱
乱暴に投げたことばにほんとうに傷ついたのはあなたではなく

017:免許
言の葉をつづることこそむずかしく免許もたずにできるけれども

018:ロビー
空港の出発ロビーぼんやりと別れのまわり鈍色になる

2

009:圏外
圏外にいる君なれど百万遍呼びかけたくて携帯にぎる

010:チーズ
ワインにはチーズが合うという人に柿の種の小袋さしだす

011:犬
無垢な目で見つめる犬にわが罪はひとつよけいに罰を科される

012:裸足
冬ごもり明けて清々するようにのびをしている裸足のゆびさき

013:彩
のぞきこむ君の瞳の虹彩の色の薄さにトクと震える

024:ミニ
深奥の昏き真(まこと)を見透かすや ミニ薔薇の棘このゆびを刺す

025:怪談
目隠しの両の手のゆび閉じきれず怪談を聞く怖さ半分

026:芝
芝桜ひとりで凛と背をのばす 美し色の群れにあるとも

027:天国
冬の日のひだまり独り占めにして寝そべる猫のそこが天国

028:着
身に着けたシャツ無造作に脱ぐように憂鬱一枚脱ぎ捨てちゃえば

3

019:沸
青き火にかけたる薬缶しゅんしゅんとたぎり沸きたる怒りのよう

020:遊
ゆらりゆら遊動円木ときのふね揺られながらもちがう夢みる

021:胃
想ってもおもってもなお遠ざかる君の心に胃がシクと鳴く

022:上野
日は落ちて上野駅発つ北斗星3号ゆらら夢ごと運ぶ

023:望
はりつめた闇より光こぼれだす 望月はただ夜のあなぼこ

4

029:太鼓
打ち止まぬ胸の鼓動は大太鼓 皮膚をへだてて君も震わす

030:捨て台詞
眉ひとつピクともさせず捨て台詞吐いて立ち去る 夢の中だけ

031:肌
凍りつく文字を抱きしめ人肌にしてはじめから並べてみよう

032:薬
じわじわと冒されてゆくアナタ熱 毒が薬になる日はくるの

033:半
なにがなんだか我を失くしかけている。とろんとわたし半熟卵

034:ゴンドラ
青かさねとろり溶けゆく宙(そら)深く夢のゴンドラつと漕ぎ出だす

035:二重
決めたから 目を閉じるそのきわみまで二重の嘘を守りとおすと

036:流
この雨は夕べあなたの肩濡らし夜を流れてわが胸に降る

037:愛嬌
愛嬌を無理強いしない人だから無愛想なまま私でいられる

038:連
「連れてって」聞こえぬほどに呟いた君の翳りをみたくないから

5

039:モザイク
けだるげなオープンカフェに視線(め)をやればモザイク通り迷いこむ過去

040:ねずみ
幼子のまわらぬ舌で一心に「ねずみぃらんど また行きたいね」

041:血
小指のさき玉をなす血の鮮やかさ過去も未来も固まろうとする

042:映画
いく百の瞳映画に吸いこまれ闇の襞にただひとりぼっち

043:濃
陽を送り光うすれて刻々と濃さ重ねゆきひそやかに夜

044:ダンス
寒い日もまだあるかしらと声に出し洋服ダンス開けてまた閉め

045:家元
他愛ないけれど根深いいさかいは本家元祖の確執に似て

046:錬
唇の紅さのような春いちご練乳とろり恋しさを噛む

047:機械
憂鬱がどろり澱んだ夜の底 機械仕掛けの心だったら

048:熱
忘れいた熱き想いに束の間が永遠になる明けやらぬ朝

6

049:潮騒
潮騒にこころ和んで人は海から生まれたと信じてもいい

050:おんな
この地球(ほし)でおんなのカタチしています静かにしずかにおわるときまで

051:痛
痛みとは厄介なもの外側の傷癒えたのち内に食い入る

052:部屋
からっぽの部屋にベルの音ひびかせる 空気ふるわせわたしを運ぶ

053:墨
肩を抱くぬくもりさえも色褪せてセピアの墨にまぎれゆく日々

054:リスク
麻薬にも似た咳止めを処方されクスリのリスク壊れゆく心

055:日記
あきらめは綴ることさえ苦しくて天気日記ではぐらかしてる

056:磨
磨かれぬ粗石のままが心地好い君に抱かれていればなおさら

057:表情
表情が乏しいわけはすぐ動く心あつかいあぐねてるから

058:八
呑みこんで溶かしてしまえ生きるためあの八月のカライ涙を

7

059:矛盾
矛盾とか思いこみとか一列に並べるだけで迷宮になる

060:とかげ
しんとして草の大地に耳をつけ九月とかげの足音を聞く

061:高台
空ちかくもっとちかくと高台に爪立つこころ堕としてわれは

062:胸元
はずさないボタンひとつで守ってるキリリ胸元風のゆびさき

063:雷
遠雷にときめいている天裂いて地に突き刺さる剣(つるぎ)を想う

064:イニシャル
Mというイニシャルを持つ恋人を五月の空の向こうに捨てる

065:水色
水色は空のなみだの色ですか たぶん九月のおわりのころの

066:鋼
ほんとうの強さは鋼のようでなくゆらんふるるんぷわんぽよよん

067:ビデオ
えぐられた疵に蹲らなくなりビデオテープのノイズくらいに

068:傘
傘もたずどしゃぶりのなか歩くこと簡単そうでできそうにない

8

069:奴隷
吐かずには吸えないというあたりまえ苦しいのです恋の奴隷は

070:にせもの
にせものをほんものよりも好く見せる惹句の技でわたしを褒めて

071:追
爪先を朱(あけ)に染めベニカナメモチ空の青さを追いかけている

072:海老
ざらざらの痛み手なずけられなくて海老グラタンに噛まれた舌の

073:廊
回廊の角ごとの翳そのさきにこそ本物がありそうで急く

074:キリン
しゃくしゃくとハルサキリンゴ噛んでいる心もとない胸が鳴らない

075:あさがお
暗闇をたっぷり吸ってあさがおよきょうも朝陽を連れて生まれよ

076:降
降る降る降る天が氾濫するように滅茶苦茶に降る心びしょぬれ

077:坩堝
泣き顔や仏頂面をどろどろに呑みこみ笑え胸の坩堝よ

078:洋
青い目で遠くとおくを見透かして西洋人形なみだもたない