本のあつまる ところ 01都築響一  |  mediaseven

 

本のあつまる
ところ
01都築響一

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都 築 響 一
___________kyoichi tsuzuki

編集者

76年から86年まで『ポパイ』、『ブルータス』で現代美術、建築、デザイン、都市生活などの記事を主に手がける。80年代の現代美術の世界的な動向を網羅した現代美術全集『アート・ランダム』(京都書院)を刊行後、現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆活動、書籍編集をつづけている。

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01都築響一

  

 
当日、都築さんが話されたことの
ダイジェストです。

 

かつての青森で貧苦のどん底に生きた農民の襤褸。工芸や民芸といった名前すらあたえられない襤褸を、考古学者や学芸員から揶揄されながらも40年近く収集しつづけるお爺さん。

刑務所の更正プログラムとしてつくられる、デザイナーがつくるモノがまとう個性をいっさい感じさせない製品と、それをつくる受刑者たちの製作現場。

グルメマップやランキング本では見向きもされないスナック。フードもドリンクも内装もフツーだから売りにはできないスナックを、自分のキャラひとつで支えるママさんたち。


◎『BORO』(右写真)
 都築響一/小出由紀子共著,アスペクト社
青森のかつての貧農が生んだ襤褸。だれも見向きしない襤褸を、ひとりで集めつづけた田中忠三郎さんのコレクションを紹介した本。
http://www.aspect.co.jp/np/details.do?goods_id=1162

——だれの手にとられない本は1000回借りられる本より価値がないのか

——この人たちのもっている強さってなんだろうって思う

いったい何なのかというと、都築さんが本をとおして伝えようとする人たちです。
だれも伝えようとしないどころか、評価もされなければ見向きもされない人たち―アートや美術の観点からすると「最底辺」ともいえる類の人を、都築さんはとりあげます。


◎『Made In PRISON 刑務所良品』(左写真)
 都築響一著,アスペクト社
刑務所の更正プログラムでつくられる一品の数々をまとめたガイド。だれからも見向きされないプロダクトに日本のいまが表現されています。
http://www.aspect.co.jp/np/details.do?goods_id=1051

そんな最底辺の人に光を当てるきっかけとなったのが、世界最大の見本市、フランクフルト・ブックフェアで出会ったソ連時代の地下出版物、しかもロックバンドの会報です。

共産体制に反対する政治学や文学とくらべると圧倒的に見下されるカテゴリーの本ですが、何かを伝えたい一心でそれをつくる本人の思いはすさまじいのです。一枚コピーをとるのも統制管理されたなかにあって、カーボン紙と白い紙を交互にはさんだ紙たちめがけてタイプライターを力いっぱい打ち込んでつくったり(なのに、できる本はたったの五冊…)、原稿を撮った写真をプリントしてホッチキスでとめてつくったりするのですから。

ぼくたちの当たり前からは想像もつかない努力を経てつくられた本との出会いは、都築さんの心を打つとともに、「どうしても伝えたい」という強さこそが本づくりにおいて大切なことだと思うようになったと言いました。

——出版社が本を出してくれないと指に力をこめてタイプを打てばいいんだ

——読ませてしまう力はなんだろうって思っちゃう

アジビラにガリ版が大活躍した時代には見向きもされなかったガリ版刷春本を、こつこつと5年もかけてつくりつづけて復刻させた四国のおじさんの思い。

コピー機を駆使して生み出された踊る文字で、漫画が見えなくなるくらいにまで飾りたてて、情欲をかもし出す誌面を生み出すレディースコミックの編集者たちの思い。

グラビア誌の美しい女性たちをハサミで切り抜き、ひたすらグラビア雑誌上にスクラップして、自分だけの美しい女性たちの写真集をつくりつづける、台湾のお爺さんの余生にかける思い。


これらの思いの持ち主は、都築さんがこれまでに取材したり、書評で取上げてきた人たちです。その人たちの思いの強さに都築さんは共振するようです。

——思いをカタチにするためには、どれだけ人の言うことを聞かないかだよね

もちろん都築さんにも思いがあります。
だれも伝えないことは、だれかが伝えなきゃならないんだ―とも言えそうな、その思いを支えている映像を最後に紹介してくれました。


◎『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』
 都築響一著,晶文社
だれの手にもとられずに、書店の片隅でひっそりと咲く本たちを取りあげた書評集。自分がほんとうに読みたいと思う本を追いつづけた後にできた「本の本」。
http://www.shobunsha.co.jp/bibliotheca/bookofbook/bookofbook_04.html#ta_14