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 日が経つにつれ、島の人達は「本当にまだいたの!」とびっくりされながらも、「そんなに言うのなら、久賀島はいい所なのかもしれないねえ。」とおっしゃるように。

 
 島に行って、人が少なくなること自体が土地をさびれさせる原因ではないのだろうと思うようになりました。
  
 今はもういない、島の土に眠る人達の思い、例えば山奥に棚田を作った人達の熱意や、弾圧のあった土地に、晴れて美しい教会を建てた、大工さんの感慨。
 薪が必要となっても、島を覆う椿の木は切らずに守り通した島民の意志、島中から出土された神仏を集めて、分け隔てなく祀った、素朴な信仰心・・・
 
 そういう名前も残らない人々の思いが島のあちらこちらの形に浮かび、そしてそれが、今島に暮らす人達の支えとなっていて、次の世代に再びつながっているのを目にしました。

 国から忘れられ、その場所に取り残されてしまったようだとか、こんな場所では何もできないだとか、昔はよかったのにとか、島ではそういう言葉を聞くことがありませんでした。
 
 廃墟が増えて、田畑が野に帰っていく様子自体は、目に見えているようなさみしい風景ではないのかもしれません。
 実際、家が草木に埋れていく様子や、壊れた橋などに美しいと感じることもしばしばでした。

 
 久賀島に行ってから、1年と半年が経ちますが、島で見たこと、感じたことを表現することが、どんな方向を向いているのか、どこにつながっていくのかを自分自身で把握するには、更に時間がかかりそうです。
 
 それでも、「久賀島に行ってよかった。」という気持ちはこれからも、真ん中にきらきらとあり続けると思います。

 

  • 著者:佐藤 かづみ
    作 成 日:2008 年 10月 12日
    発   行:佐藤 かづみ
    BSBN 1-01-00019120
    ブックフォーマット:#394

    photo | kazumisato