絵はがき風呂  |  kaerusan

(別府温泉名勝)砂場の実況 

 温泉や浜辺の絵はがきには、なんともトボケたものが多い。
 水辺に来ると、人は自分でも気づかないうちに、いろいろ漏らしてしまうらしい。

 そういえば、みうらじゅん氏の好著「カスハガの世界」にも温泉や水辺の絵はがきが数多く登場する。

 こうした絵はがきを見ると反射的に手が止まり、ひょいと抜いてしまう。
 多くの場合は、もう露骨に風俗やポーズがおかしい。だから、見た瞬間に、どこがどうおかしいのかわかるのである。

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 ほら。

(東尋坊名所)波のリズムに踊る海女 

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海軍兵学校遊泳教員能島流師範多田氏(伝馬形) 

       











                    ほら。

 露骨におかしいわけでもないのに、なんとなく引き当ててしまう一枚、というのがある。
 はたと手が止まる。止まるが、なんとなく、一気に引くまでの決定力がない。にもかかわらず、ついでに、くらいのつもりで買ってしまう。

 何が自分をつかまえたのか、そのときはわからない。

 家に帰ってしげしげとその絵はがきを眺めながら、ゆっくりと頭を「解凍」してやる。
 すると、だんだん絵はがきの上を目が泳ぐようになる。一枚の絵はがきなのに、次第に目が忙しく動き出し、その動きにリズムがついてくる。気持ちが浮き立ってきて、一枚を眺めているだけでどんどん時間が経つ。

しかし。

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(湯崎名勝)遊浴自在の大浴場、稲荷湯 

たとえば、こんな絵はがきで。

 いま、あらためて見直すならば、明らかにおかしいところが、あるにはある。

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 子ども。

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 次郎は、いかにも子どもらしい。
 
 顔立ちのせいだろうか。いや、顔だけじゃない。

 腕だ。腕が幼いのだ。

 次郎の右腕は、湯船のへりをつかまえようとしている。ところが、左腕はちょこんとへりに置いただけ。

 風呂というよりプールなのだ、この腕の形は。ひと泳ぎして疲れた水泳選手のあの感じ、「あ、5位か・・・」と、呆けたように電光掲示板を見ている感じ。寄る辺ないのである。風呂に体を預けきっていないのである。この大浴場を受け止めかねているのである。

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